窓の外にハイテク企業のビル群が見えるオフィスビルの一室。目の前に、プラスチックのカップに入った水が置かれていた。
「どうぞ」。勧めに応じて、一口。クセがなくて飲みやすい。
お礼を言うと、提供してくれた広報担当者がほほえんだ。
「気に入りましたか? これが、当社の機械で空気から生成した飲料水です」
ボタンを一押しするだけで、空気が水に変わる――。まるでSF(サイエンス・フィクション)の世界だ。
しかし、中東のスタートアップ企業ウォータージェンは、それを「現実」にした。
有望なIT企業がひしめき、「第2のシリコンバレー」の呼び声も高いイスラエルの商都、テルアビブのビル群に本社を構える。
その技術は世界中から注目を集め、英国のチャールズ国王も、皇太子時代の2020年に非公式で視察に訪れたほどだ。
どうやって、空気から水をつくるのか。
仕組みはこうだ。
空気から、特別なフィルターを使って汚染物質を除去し、露点(空気に含まれる水蒸気が液体になる温度)まで冷却。さらに水を浄化し、求める味に応じてミネラルなどを添加する。
電源がなくても、太陽光を使って、生成装置を動かすことができる。砂漠やインフラが壊れた紛争地でも、人々が生きていくのに欠かせない飲料水を確保できる。
ミネラル分の配合も自由に調整できるため、つくり出す水の舌触りや味までコントロールできる。
たとえば、南アルプス、六甲、霧島……といった日本各地の名水の味を、イスラエルにいながらにしても、理論的には再現できることになる。
広報担当者はこう語る。
「例えば、当社で働くフランス人のスタッフは自国産の『エビアン』が大好きです。そこで、機械で生成した『エビアン風』の水と、実際の『エビアン』を飲み比べてもらったことがあります」
そして、こう続けた。
「どうなったと思います?」
空気から水をつくる装置は、どうやって生まれたのでしょうか。記事の後半では、その経緯や、水不足に直面する人類にとっての意味合いを紹介します。
「『僕に分からないはずがな…
ボタン押すと、空気が飲み水に エビアンも作れる?SF並みの新技術:朝日新聞デジタル - 朝日新聞デジタル
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