東京・多摩地域の水道水源の井戸が発がん性の疑われる有機フッ素化合物(PFAS=ピーファス)で汚染されている問題は、汚染源特定が一向に進まない。米軍横田基地(東京都福生市など)でPFASを含む泡消火剤の漏出事故があったことが公表され、基地の「容疑」が濃厚となった後も、都は基地への立ち入り調査の要請に消極姿勢。基地周辺自治体にも具体的な動きが見えない。(松島京太、渡辺真由子、奥野斐、岡本太)
◆最近の動きは?
「関係自治体の意向を踏まえることが適切である」。基地への調査を問われ、木原稔防衛相は9月29日の会見で話した。防衛省側は、6月30日に都などに泡消火剤の漏出を伝えて以来、一貫して調査は関係自治体の要請を受けてからとの考えを示す。
ただ、「関係自治体」の束ね役である小池百合子都知事には、積極的な様子がない。9月29日の会見でも「防衛省が一番ご存じのこと。立ち入りについてはさまざまな会議体があり、それを通じてということになる」と、要請するかどうかを答えなかった。
「会議体」の一つが、横田基地に関する都と周辺市町連絡協議会。小池知事が会長で立川、昭島、福生、武蔵村山、羽村の5市と瑞穂町で構成する。7月に漏出の量や場所の説明などを政府に文書で求めて回答を得てからも、動きがない。
◆「知事はできない理由があるなら納得できる説明を」
協議会メンバーで人口が最多の立川市は、9月に初当選した酒井大史市長が「近隣市と連携して要請していきたい」とするが、具体像はまだ示されていない。
協議会に入っていない国分寺市は、市民団体の血液検査で最も深刻な汚染が判明し、汚染度が高い6〜7市で対策を議論する会議体をつくる構想を6月に示したが、断念した。市担当者は基地への対応などで「温度差があった」と明かす。
市議会は9月28日、都に汚染原因究明や血液検査などを求める意見書を全会一致で採決。ただ、立ち入り調査への言及はない。市議の一人はこう振り返る。「良い意見書になったとは思っていない。結局、横田基地には触れちゃいけないという空気が一部あった」
血液検査に取り組んだ市民団体「多摩地域のPFAS汚染を明らかにする会」の
◆横須賀基地では地元市主導の立ち入り調査が実現しているのに
日米地位協定上、日本は米軍の許可なしで基地への立ち入り調査はできないが、環境補足協定では米側からの漏出事故発生の通報などを条件に、立ち入り調査の要請が可能とされる。
横田基地以外の米軍施設では、自治体主導で立ち入り調査が相次ぐ。神奈川県横須賀市の横須賀基地では、基地の排水から高濃度のPFASが流出したことを受けて、市が県を通さず単独で防衛省に申請書類を出して実現した。沖縄県の普天間飛行場では、県が率先し防衛省に申し立てたという。
日米地位協定に詳しい東京外国語大の伊勢崎賢治名誉教授(国際関係論)は「横田基地に踏み込むことで地位協定などの日米関係を揺るがしかねないという考えが、消極姿勢の根本にあるのではないか。都や地元自治体が声を上げて、国を動かしていく姿勢が重要だ」と指摘する。
東京・多摩地域のPFAS汚染 東京都などの調査では2005年以降、多摩地域の広範囲の井戸から高濃度のPFASを検出。都水道局は19年6月以降、水道水源の井戸40カ所の取水を停止している。市民団体が22~23年に実施した住民の血液検査の結果では、停止井戸から取水していた浄水施設がある7市で、67%の住民の血中PFAS濃度が、米国で「健康被害の恐れがある」と定める指標を超えていた。横田基地でのPFASを含む泡消火剤の漏出事故を巡っては、米軍は基地外への流出を認めていない。
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