プラントベースフードを活用したしょうが焼きを調理する生徒ら＝和歌山市吹上1の和歌山大教育学部付属中で2023年9月20日午前10時8分、橋本陵汰撮影
見た目も味もしょうが焼きそっくり。でも、原材料は小麦由来の代替肉――。世界人口の増加などにより、たんぱく質が供給不足になる可能性が指摘され、植物由来の原材料を使用して肉や魚などに似せた食品「プラントベースフード」に注目が集まっている。そんな中、和歌山大教育学部付属中（和歌山市吹上1）で9月、プラントベースフードの調理や試食を通して食の多様性などを考える授業が2日間にわたって行われた。
牛のおならやげっぷに多く含まれるメタンガスは、二酸化炭素よりも温室効果が高く、地球温暖化の原因の一つとされている。また、家畜を育てるためには大量の餌や水が必要で、環境への負荷も大きい。さらに、世界規模で地球環境が今よりも悪化するとされる「2050年問題」の一つとして、世界の人口増加などの影響で、たんぱく質の需要と供給のバランスが崩れる「たんぱく質危機」も問題視されている。
これらに対し、植物由来のプラントベースフードは、たんぱく質などの栄養を摂取できて健康に良く、食の選択肢を広げるだけでなく、環境負荷を低減できて環境にも優しいといった利点がある。
授業には、1年生約140人が参加。プラントベースフードを開発する「グリコ栄養食品」（大阪府）と、全国で食育プログラムを展開している建設コンサルタント会社「八千代エンジニヤリング」（東京都）の担当者が講師を務めた。初日は、食と環境問題とのつながりや食品の成り立ちについてそれぞれ担当者が講義。2日目はプラントベースフードを使って調理、試食し、どんな味かを確かめた。
調理したのは「小麦由来のポーク風のしょうが焼き」。グリコ栄養食品が開発し、小麦を原料としたたんぱく質素材「Whetabel N10」を肉に見たてて使用した。
調理法は通常と同じで、生徒らがフライパンで焼いてタレで味付けし、野菜などと一緒に味わった。三枝蓮さん（12）は「本当のお肉みたいでおいしかった。焼くのも簡単でたんぱく質も取れるので家でも食べたい」と味に驚いた様子だった。丈六（じょうろく）祐茉さん（13）は「SDGs（持続可能な開発目標）につながるのであれば大人になっても食べ続けたい」と話していた。
3年ほど前から学校で「食べて学ぶSDGs」を実施する八千代エンジニヤリングの担当者は、建設事業で訪れた途上国で多くの環境破壊を目にし、食や水の大切さを伝えなければと思ったという。しかし、講義だけでは児童や生徒たちにはそれほど響かなかったといい、「講義と一緒に調理して味わってもらうことで、代替肉を知らない人でも手に取りやすく、こういう選択肢もあるんだと認識してほしかった」と目的を話す。
これまで講義をしてきた3000～4000人にアンケートを取ったところ、9割以上が「また食べたい」と回答。一番多い理由が「おいしかったから」で、次に「環境にいいから」が続いた。和歌山大教育学部付属中の生徒たちも授業の振り返りで「いいイメージはなかったけど食べたらおいしかった」と発表していた。
家庭科担当の黒柳友花・特任教諭は「肉を食べるのがいけないことではない。新たな食の選択肢の一つとしてプラントベースフードも活用してほしい。お肉じゃないのにお肉のようで、企業の努力も生徒たちに感じてもらえるいい機会になった」と話していた。【橋本陵汰】
「これが小麦?まるでお肉!」 植物由来の代替肉 食べて環境学習 - au Webポータル
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