真夏の気温上昇を加速させるヒートアイランド現象は、単に暑いだけでなく熱中症などさまざまな問題を引き起こす。熱中症は、猛暑日や熱帯夜に体内の熱交換がうまくできず体調に変調を来すもので、失神やけいれんを伴いひどい場合には死に至る。平均気温が30度を超え、最高気温が35度を超えると熱中症患者が増加する。
環境省と気象庁は2021年、毎年4月第4水曜日~10月第4水曜日の期間、熱中症の危険性が極めて高いことが予測された場合、予防行動を促すため「熱中症警戒アラート」を発令している。夏季の気温上昇に伴って熱中症による救急搬送者や死亡者が増えてきたためである。
熱中症警戒アラートは、気温や湿度、日差しの強さ、風量から算出される「暑さ指数」が「33以上」と予測した場合に出される。全国を58に分けた予報区ごとに、前日の午後5時と当日の午前5時に発令される。
もう一つ、ヒートアイランド現象の悪影響として都市型の水害がある。都市と郊外との間に大きな温度差があると、強い上昇気流が生じる。その結果、狭い地域に大型の雲が発生し、局地的に大量の雨を降らせる通称「ゲリラ豪雨」がしばしば発生する。
例えば、猛暑の都心に東京湾から冷たい空気が入り込む際の温度差が上昇気流を作り出し、激しい雨を局地的に降らせる。アスファルトやコンクリートで覆われた都市では、降った雨が地面に浸透することなく排水溝に流れ込む。河川や下水管など排水システムの想定降水量は1時間に50ミリメートルとされているが、下水の処理能力をはるかに超える降雨が起きると洪水が発生する。
「風の道」で対策
ヒートアイランド現象は盛夏の気温上昇で語られることが多いが、年間を通じて見ると冬に起きる「ダストドーム」と呼ばれる大気汚染と密接に関連している。よく晴れた冬の無風状態の夜間に、放射冷却によって地面が冷やされる。その結果、地表近くの気温が上空より低くなる…
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