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Tuesday, August 29, 2023

空気を読むより鈍感な人が求められる時代になった - アゴラ

黒坂岳央です。

昔から「空気を読むことは大事」と言われてきた。一昔前は空気を読めない人は「KY(空気読めない)」と揶揄され、コミュニティからの排除は恐るべきことと認識されてきた。

この空気を読むことや察する文化は、何も日本に限った話ではない。英語でread the roomというフレーズは「状況を察する」「空気を読む」に似たニュアンスを持つ。ビジネスのプロジェクトや会議に関与権がないのに無作法に介入する行為に対しHe is such a party crasher.などとたしなめるフレーズもある。文化の違いで他人への気遣いが異なる形で現れるのに過ぎないと考える。

確かに空気を読むべきタイミングは確実にある。しかし読みすぎたり察しすぎると人生の可能性を閉じてしまったり、周囲からはありきたりで傾聴の価値がない話をすると評されてしまうだろう。やり過ぎは禁物だが、繊細で気が利くよりも時に鈍感でパワフルに突き抜ける力の持ち主が成功するケースも少なくないと思っている。

photosvit/iStock

空気を読みすぎて挑戦できない

程度に場の雰囲気を察したり、空気を読むことは重要だがそれが過剰になると挑戦できなくなってしまう。空気を読むというのは、すなわち忖度するということであり、周囲や相手を意識して本音を言えないということである。

記事や動画を発信する立場になり、徐々に見てくれる人が増えてくると本音を出しづらくなるという事が起きる。影響力が強まるということは、賛成する声が大きくなるだけでなく、同時に反対意見やアンチの勢力も増すということを意味する。仕事では利害関係者を意識して言いたいことを引っ込めるようになる。深夜のテレビ番組がハチャメチャにやって人気が出て見る人が増えたところ、忖度が始まり内容がつまらなくなってかつての視聴者が離れるということが好例ではないだろうか。

仕事でもイチプレーヤーとして活躍していた人が部下を持ったり、取引先が増えるとリスクを取って挑戦することができなくなってしまうことが起きる。関係者の顔色を伺うようになって保守的になってしまうのだ。

しかしビジネスの世界においては、常に下りエレベーターに乗っているような状態であることを忘れてはいけない。そのため過剰に忖度したり、挑戦をやめたタイミングからひたすら後退し続け待っているのはジリ貧である。

鈍感さは時に力になる

長きにわたり「鈍感さ」は欠点と認識されてきた。一昔前は国家機関や大企業などが大きな力を持ち、集団の中に身を置く上では長いものには巻かれろの精神で無難に立ち回ることが生存戦略として機能し、コミュニティからはみ出すことはすなわち生存を脅かすリスクという認識であった。

だが価値観が多様化し、個人が強い力を持つ「個の時代」になったことで個人の主義主張に共感する小さなコミュニティの中で生きられる時代へと変化した。小さなコミュニティでは他の人とは異なるエッヂの効いたパーソナリティに惹かれて集まってくる。

だが、忖度しないということは当然に多くの敵を作ることになる。自分の本音を出すことでそれを良しとしない一派から反発を生み出すのだ。しかし、そこでアンチからの圧力に負けて本音を引っ込めるとコミュニティ内での求心力を失うことになる。そのため周囲からの反対意見を気にせずに自分の主義主張を貫く「鈍感さ」はスキルとして認識されるように変化したと思っている。

世の中の99%に無視されたり反対されても、1%を味方につけることができれば十分生きていけるのだ。具体的な数字を出すなら、日本人は1億2000万人いるので、1%が味方になるなら120万人になる。これは潜在的な支持者としては十分すぎる数である。

周囲の意見を気にしない

アンチを無視するのは簡単でも、支持してくれる人、ファンの意見を無視するのは簡単なことではない。しかし、突き抜けるためには時に支持してくれる人にも忖度せず、自分の信じる道を進む強さが求められる。

自分はYouTube動画を出しているのだが、発信スタイルをドンドン変化させている。初期の頃は10分前後の動画ばかりを出していたが、2021年から1時間、時には2時間超えの動画を出すようになり、2023年からは書籍のレビューも積極的に取り入れるようにした。

この変化に対して「どの動画も長くて見る気がせずチャンネル登録を解除しました」「前のスタイルの方がよかった」という変化したことは残念だと声をもらってきたが、自分なりの信念と戦略を優先して一部の人が離れることを受け入れてきた。しかし結果として新しいスタイルを支持してくれる人も現れたのだ。つまり、視聴者の中でも新陳代謝が起きたということである。これはあらゆるビジネスでも同じことが言える。

映画でも漫画でも音楽でも、芸風やスタイルが変わることがある。既存のファンが去っていき、新しいファンが付くことを繰り返しながらトータルでは徐々に見てくれる人が増えていくのが理想的だろう。それにはあまり顔色を伺いすぎず、反対意見に鈍感になり自分らしさを全面に押し出す勇気が必要ではないだろうか。

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