第36回 谷中 焼肉「肉と日本酒」
2020年から始まった新型コロナウイルスの感染拡大により、飲食店の中でも、団体や宴会客がメインだったところは特に大きなダメージを受けた。東京・台東区の谷中にある「肉と日本酒」(以下、「肉と日本酒 谷中店」)は、まさにそんな店の1つだ。貸し切り専用の焼肉店だったからだ。
「肉と日本酒 谷中店」。看板はなく、入り口の左横に「肉」の1文字が掲げられているだけ。目立たない入り口は、隠れ家のようでもあり遊び心がある
遡ること7年前。2016年の春。当時、黒毛和牛一頭買いを売りにしていたリーズナブルな焼肉店「醍醐(だいご)」は、王子本店を皮切りに、お台場店、有楽町店、横浜店、銀座店など順調に店舗数を拡大していた。
しかし、醍醐 千駄木店(現「肉と日本酒 谷中店」)はスタッフの人手不足と人通りが少ない場所に立地していたため、他の系列店に比べて苦戦を強いられていた。醍醐を運営するダイゴインターナショナル(東京・港)代表の尹伸文(ゆん・のぶふみ)氏は、当時、閉店を検討していたという。
そのことを懇意にしていた東京・吉祥寺にある焼肉店「肉山」のオーナー、光山英明氏に相談したところ、ある提案を受けた。人手不足を補うために、「平日は1日1組(20人、最大45人)限定」「アルコール、ドリンク類はセルフサービス」という指針を掲げ、尹氏が肉の仕入れを、光山氏が集客と日本酒の仕入れを担当するという内容だった。
16年4月4日、「醍醐 千駄木店」は店名を「肉と日本酒 谷中店」に変更するとともに、光山氏が提案した指針を受け入れ、新たにスタートを切った。尹氏はリニューアル内容、中でも1日1組という方針について疑心暗鬼だったという。しかし、蓋を開けてみると、肉山の常連客を中心に、SNS(交流サイト)などで一気に話題となり、予約が2カ月先まで埋まり、その後も順調に売り上げを伸ばしていった。そんな中、新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化していく。
貸し切り専門の焼肉店がコロナで大打撃 事業再構築への道のり - 日経ビジネスオンライン
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