世界的なプラントベースフード（植物性食品）への関心の高まりと市場成長の流れに合わせて、プラントベースフードに力を入れている企業がある。業務用チョコレートや大豆ミートの国内シェアトップを誇る不二製油だ。食品メーカーの黒子としてBtoBビジネスを行ってきた同社は、近年のイノベーションにより、肉・乳製品の満足感を植物性食品で表現する技術を進化させ、素材製品群「GOODNOON（グッドヌーン）」をフラッグシップに新領域に挑む。市場の新たな期待に応えようとする同社の取り組みを追う。（全2回）
プラントベースフード（植物性食品）が世界的に注目を集めている。その世界市場の規模は、2020 年には294 億ドル（約4 兆円）だったが、2030 年には1619 億ドル（約22 兆円）にまで拡大すると予測されている成長産業である※。
※“Plant-based Foods Market to Hit $162 Billion in Next Decade, Projects Bloomberg Intelligence”, (August 11, 2021), Bloomberg Intelligence.
プラントベースフードは、高まる健康志向のニーズと相性が良く、地球環境に優しいという特徴がある。栄養面から見る大豆は、肉と比べてカロリーが2分の1から3 分の1で、低脂質。コレステロールの心配もなく、食物繊維やミネラルなども豊富である。環境面から見ると、生産時の水消費量が、牛を飼育する場合の8分の1で済み、牛肉に比べてわずかな肥料と水で育つ。
また、温室効果ガス排出量（CO2 換算）が85分の1 と環境負荷も少ない※ため、2050年には100億に達するとも予測される世界の人口爆発による、将来的な食糧不足の課題解決にも期待される食材でもある。2015 年に国連で採択された「SDGs（持続可能な開発目標）」とも合致する。
※⽣産時の温室効果ガス排出量：カーボンフットプリントコミュニケーションプログラムの数値より不⼆製油が算出。
また、経済発展が著しく人口の増加率も高いイスラム圏や、動物性食品を口にしないヴィーガンなど、様々な理由で動物性食品を摂取しない人たちにも食の選択肢を広げる。プラントベースフードは、その意味でも新しい市場を獲得する可能性が高い。
そのような世界的な流れを受けて、大胆な経営戦略を打ち出す国内企業がある。大阪府に本拠を置く不二製油グループである。創業は1950年。大豆やパーム油などから作る植物油脂や、乳化発酵技術により、さまざまな植物性の食品原料を黒子として作る食品素材メーカーで、業務用チョコレートは国内トップ、世界市場でも第3位のシェアを誇る。大豆ミートは、BtoBビジネスとして、国内シェアの約半分のシェアを占めると言われる。
不二製油株式会社本社ビル（阪南事業所）を見る（写真：栗栖誠紀）
そんな同社は昨年（2022年）7月、東京のホテルニューオータニで開催した「プラントベースフード戦略説明会」で、「2030 年までに植物性素材を主とした社会課題解決型の製品群の売り上げを1000 億規模にする」と発表した。また同時に、同ホテルのシェフが考案したメニューの試食会を行った。
「植物性素材を主とした社会課題解決型の製品群」とは、地球環境への負荷が少なく、将来予想される食糧危機の備えにもなり、健康志向にもかなう大豆などの原料を中心としたプラントベースフードのこと。単に社会課題の解決に役立つだけではなく、「おいしさ」によって新しい市場の創造を目指す。
ホテルニューオータニ ガーデンタワー40階「タワーレストラン」 のプラントベースフードを使ったビュッフェメニューの一部。肉、チーズ、クリームスープ、麺、チーズケーキやチョコレートのアイスクリームなどが植物性素材で表現されている（写真：栗栖誠紀）
その計画の裏付けには、乳製品に置き換え可能な豆乳製品の開発や、従来は難しいとされてきた「肉のような繊維感や噛み応え」と「口どけ」の両立を実現する新しい大豆ミートの開発、商品化の成功があったという。「健康」と「環境」そして何よりも「おいしさ」を大前提に「食の選択肢を広げる」という考え方の下、 市場の開拓に挑むという。
同社の新たな取り組みについて、キーパーソンに聞いた。
肉の満足度をプラントベースフードで実現 不二製油グループの挑戦（前編） | 未来コトハジメ - 日経BP
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