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Thursday, December 8, 2022

【お肉のコラム】(12)「ケイサン牛」について知っていますか? - 日本農業新聞

 皆さんは“ケイサン牛”という言葉を知っていますか? お産をし終えた母牛を“経産牛”と呼びます。肥育目的で育てられた牛と比較して肉質は劣り、一般的に食肉としては評価されづらい牛(安く取引される牛)として挙げられます。

 私は和牛生産農家の家に生まれ、常日頃から牛やお肉についての話が一家だんらんの場で繰り広げられていました。その中で“ケイサン牛”という言葉を初めて耳にしたとき大きな勘違いをしたことをよく覚えています。牛肉は歩留等級をA~Cの3段階、肉質等級を1~5の5段階で評価して取引されていき、A5・A4などと格付けされていきます。今では笑い話ですが、当時知識が浅かった私はこの“ケイサン牛”を聞いた時“K3牛”、つまりその牛の背景も知らずに単純にお肉として評価の低い牛だと間違った解釈をしていました。

 私たちが「美味しそう」「高級」と感じるサシの入った和牛は日本が世界に誇るブランドです。その裏側には必ず“経産牛”が存在しています。生活者だけでなく業界人においても生産段階を知らずに「悪い肉」などとやゆされることも少なくはありません。経産牛は私たちに美味しいお肉を供給するために、お産を繰り返し、その役目を全うした牛になります。実際に食べると経産牛は長く飼われた分、味の濃い肉になり、肥育目的で育てられた牛とは全く異なる美味しさを持っていると思います。食肉に「悪い肉」というのは存在しません! 食肉になるまでのストーリーは業界人がしっかりと伝え、生活者が味わって食べる。当たり前に聞こえるかもしれませんが、そこで初めて生き物の命が活かされるといえるはずです。

公益社団法人全国食肉学校教務部専任講師・澤村竜樹

(公益社団法人全国食肉学校
 教務部専任講師 岡山雄磨)

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