空気をまつる山形県朝日町の「空気神社」を全国に発信しようと、空調メーカー2社が町とそれぞれ結束を強めている。ダイキン工業(大阪市)が先駆けとなり、今月はパナソニック(大阪府門真市)の社内カンパニー「空質空調社」が町との連携を発表した。消費者に空気への関心を高めてもらうとともに、社のイメージの向上につなげる狙いがある。
空質空調社の道浦正治社長らは9日、朝日町と共同で記者会見を開き、事業案を説明した。温度や湿度などを技術で調整し、町外で空気神社周辺の空気を体験できるイベントを随時実施する。町内の子供たち向けには空気の大切さを伝える「空気教室」を開く。
空気神社は町民が町内の良好な空気に感謝しようと考案。1990年に標高約630メートルの山中に完成した。敷地に地下本殿、空と木々を映す縦横5メートルのステンレス鏡板を設置。宗教性がない「環境のシンボル」として知られるようになった。
松下精工(現パナソニックエコシステムズ)は神社の趣旨に賛同し、建立資金として100万円を寄付した。ただ、当時は換気扇製造・販売の事業が中心だったため、町との接点は約30年間途絶えていたという。
空質空調社の小笠原卓副社長は会見で「(当社の発足で)換気と空調の事業が一緒になり、やっと(会社として)空気を語れる時代が来た」と意気込んだ。
町は空気神社の建立を機に6月5日を「空気の日」と定めており、「環境の町」を目指す上で、企業の力も借りたい考えだ。鈴木浩幸町長は「気象災害の激甚化などで今まで以上に環境保全が求められる。空気と、それを生む自然の大切さを発信したい」と語る。
ダイキン工業は2006年から、空気神社の写真を事業所に張り出したり、東京のショールームに模擬参拝できる場を用意したりして、朝日町と交流を続けてきた。空気清浄機事業の撤退危機に陥っていた頃に社員が空気神社で参拝したのをきっかけに、社内で商売繁盛祈願が恒例化したという。
同社が主催するイベント会場で町の物産展を開くなど、町の産業活性化でも協力する。ダイキン工業の広報担当者は「互いのPRだけではなく、心の交流が続いていると考えている」と述べ、今後も引き続き連携する考えを示した。
山形のPM2・5濃度、4年連続全国最良
空質空調社が山形県朝日町との連携に動いた背景には、山形県内の微小粒子状物質「PM2.5」濃度が低く、大気汚染の優等生だという事情がある。県の集計によると、県内のPM2.5濃度の年平均値は、2016年度から19年度まで4年連続で全国で最も低かった。
PM2.5濃度は法律に基づき、全国約800カ所で観測している。県内では県と山形市が計11カ所で実施し、19年度の年平均値は1立方メートル当たり5.7マイクログラム。2位の北海道(6.9マイクログラム)、3位の石川県(7.2マイクログラム)を大きく下回った。
県水大気環境課は「数値は全国的に改善傾向にある」とした上で「県民に野焼きをしないよう広報し、エコドライブを推進するなどの対策を取っている」と取り組みの成果を強調する。
PM2.5は自動車、航空機、焼却炉などから排出され、呼吸器系疾患を引き起こすリスクがあるとされる。
[空気神社]朝日町の観光施設「Asahi自然観」の新設を機に構想が持ち上がり、町民の寄付金などで整備された宗教法人格を持たない神社。参拝方法は、2礼した後、心の中で「春、夏、秋、冬」と念じながら4拍手し、両腕を挙げて深呼吸をしてから1礼する。本殿を公開する「空気まつり」は「空気の日」の6月5日と近くの土日に開催。今年は冬季閉鎖に入り、現地に立ち入れるのは来年4月下旬ごろの予定。
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「空気神社」全国で輝け 空調2社が山形・朝日町と連携 ダイキンとパナソニック系 - 河北新報オンライン
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