料理家・冷水希三子(ひやみず・きみこ)さんがリクエストに応えて料理を作ってくださるという夢の連載。今回はこれからの時期、寒い日に温まるメニュー。肉団子と白菜の煮込みをご紹介します。
―― 冷水先生、こんにちは。最近は朝夕は冷え込む日も増えてきましたね。
冷水 はい、めっきり秋です。
―― 我が家では暖かいお布団を出しました。
冷水 そろそろストーブも出さないとですね。
―― 急に気温が下がってきたこともあって、温かい料理が恋しくなってきました。今日はおなかがぽかぽかするメニューをリクエストしたいなと思っています。
冷水 お鍋もいいですし……、悩みますね。
―― 豪華にお鍋!といきたいところですが、昨今の物価高騰を受けて、家計にも寒風が吹き荒れています(笑)。できたら買い求めやすい食材で作れるメニューだとありがたいのですが……。
冷水 たしかに、家計防衛は大切ですね! では比較的買い求めやすい豚ミンチを使った煮込みはどうでしょうか? これから旬を迎える白菜をたっぷり使って、食べ応えを出す作戦です。
―― それはありがたいです〜!
冷水 身近な食材でも本格的な味を出せるよう、少しだけ工程が多くなりますが、そこは頑張りましょうね。
―― はい!
冷水 ではまず細々した下準備から。干しシイタケは前日から水に浸して戻しておいてください。
―― おいしい出汁(だし)担当ですね!
冷水 そうそう、お肉の前に木綿豆腐を30分ほど水切りします。さらに干しエビをひたひたの熱湯に浸して、軟らかくしておきます。そして春雨は水に浸して、軽く戻しておきます。白菜は一口大に切っておきましょう。
―― おお……、脇を固める食材たちがすごいですね。
冷水 ふふふ、名脇役たちが集まると、お料理がグレードアップするんですよ。そしていよいよ主役の豚ミンチの登場です。
―― 待ってました!
冷水 ボウルに豚ミンチを入れ、塩0.5gを加えてよく練ります。
―― 他の調味料は入れず、まず塩だけを入れて練るんですね?
冷水 はい。塩は肉の繊維を壊す働きがあるので、まずはここで肉を軟らかくするんです。粘りが出てきたら、しょうゆ、生姜(ショウガ)のすりおろし、酒を加えて、さらに練っていきます。
―― だんだん滑らかになってきましたね。
冷水 次に水切りしておいた木綿豆腐を手で崩しながら加えて練ります。豆腐が入るとふんわりとした食感になりますので。
―― かさ増しにもなって、ありがたいです!
冷水 家計防衛の援軍ですね(笑)。次に片栗粉を加えて混ぜ、続いてごま油を加えて練ります。
―― 段階ごとにしっかりと練っていくんですね。
冷水 はい、加える調味料や粉、油にはそれぞれ役割がありますので、その都度よく混ぜて練ることが大切なんです。これをきちんとやるかどうかで、仕上がりが全然違いますから、だまされたと思ってやってみてください。
―― 先生がそう言う時は、本当に仕上がりが劇的に変わるので、本気で取り組みます!
冷水 いい心がけです(笑)。さて、肉だねができたら、5等分くらいにして丸め、冷蔵庫で少し休ませます。
―― あ、これはハンバーグの回で学びましたね。手で練ると肉の脂が溶け出してしまうので、それを固めるために冷やすんですよね。
冷水 その通り、素晴らしい生徒さんです! 冷やしてから揚げると、よりジューシーに仕上がります。今回は衣をつけない素揚げですので、揚げの工程は簡単です。
―― ありがたいです〜。
冷水 肉団子はあとで煮込みますので、表面がカリッとしたら揚げは完了です。
―― すごく大きな肉団子! 表面がこんがりとしていて、おいしそうです……。
冷水 では、最後の煮込みの工程に行きましょう。鍋に揚げた肉団子と、干しシイタケ、背ワタを取った干しエビを入れ、その上にたっぷりと白菜をのせます。
―― あふれんばかりの白菜!
冷水 そこに干しシイタケのもどし汁とかつお昆布出汁を加えて火にかけます。
―― めくるめく出汁のオンパレードですね。
冷水 具材がたくさん入るお鍋だと、食材から出汁が出るので、ここまで援軍はいらないのですが、今回は具材の種類も量もそこまで多くないのでね。サポーターが必要なんです。
―― あ、沸騰したらアクが出てきましたね。
冷水 はい、アクを取り除いたら、戻しておいた春雨を加えましょう。軽くふたをずらして弱火で1時間ほど煮込んだら完成です。
―― すでにいい香りがしてますね。
冷水 1時間ほど経って、白菜がくたくたになったら完成です。仕上げに塩で味を調えて、さあ、召し上がれ。
―― とにかく肉団子の存在感がすごいですね! 鍋とはまた違って、これは完全にお肉料理です。テンション上がります〜。
冷水 肉団子を崩して、スープに浸して食べるとおいしいですよ。
―― う〜ん、さすがお出汁オールスターズが集結しただけあります。すごく優しい風味なのに、どこまでも奥行きのある出汁感がたまりません。肉団子もふわふわです。
冷水 白菜と春雨も、いい仕事をしてるはずです。
―― おっと、こちらはお出汁を受け止める側ですね。目いっぱいおいしい出汁を吸い込んだ白菜と春雨……、これは無限に食べられるやつです。なんだか体がぽかぽかしてきました。
冷水 肉団子には生姜も入っていますしね。
―― ダイレクトにお肉の味を楽しめる点もいいですね。しかも豚ミンチだけでこのボリュームと満足感はすごいです!
冷水 家計がピンチの時でも、工夫次第でお料理は豊かになります。ぜひ、試してみてくださいね。
肉団子と白菜の煮込み
材料(3、4人分)
-
豚ミンチ
200g
-
木綿豆腐
100g
-
干しシイタケ
2個
-
水
200ml
-
干しエビ
5g
-
白菜
1/6個
-
春雨
20g
-
かつお昆布だし
400ml
-
片栗粉
大さじ1
-
ごま油
大さじ1/2
-
塩
適量
-
揚げ油
適量
-
塩
0.5g
-
しょうゆ
小さじ1弱
-
生姜すりおろし
1片分
-
酒
大さじ1
A
- 干しシイタケは水に浸して一晩戻す。
- 木綿豆腐は30分ほど軽く水切りする。干しエビはひたひたの熱湯を注いで軟らかくする。
- 白菜は一口大に切る。春雨は水に浸して軽く戻す。
- ボウルに豚ミンチとAの塩を加えてよく練り、そのあとに残りのAを加えて練る。
- 4.に豆腐を崩して加えて練り、片栗粉を加えて混ぜる。続けてごま油を加えてさらに練る。5等分くらいのボール状にして冷蔵庫で少し休める。
- 5.を素揚げし、バットなどにとっておく。
- 鍋に6.の肉団子、硬い軸を取り除き、半分に切った干しシイタケ、背ワタを取った干しエビを加え、一番上に白菜をのせる。そこに干しシイタケの戻し汁、かつお昆布だしを加えて火にかける。沸いたらアクを取り、春雨を加えて軽くフタをずらして弱火で1時間ほど煮る。
- 塩で味を調える。
出汁をたっぷり味わう、肉団子と白菜の煮込み - 朝日新聞デジタル
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