日清食品ホールディングスと東京大学大学院情報理工学系研究科 竹内昌治教授の研究グループは、「食べられる培養肉」の作製に日本で初めて成功した。これにより、肉本来の味や食感を持つ「培養ステーキ肉」の実用化に向けて前進した。
「培養ステーキ肉」の研究は、2017年度より共同で実施。研究の背景として、世界的な人口増加やライフスタイルの変化により、地球規模で食肉消費量の増加が見込まれていることと、家畜を育てるための飼料や土地の不足が大きな問題となっていることを挙げている。
培養肉とは、畜肉の細胞を体外で組織培養することによって得られた肉のこと。家畜を飼育するのと比べて地球環境に与える負荷が低いほか、畜産のように広い土地を必要とせず、厳密な衛生管理が可能になるなど、さまざまな利点があることから食肉の新たな選択肢の一つとして期待されている。
食べられる培養肉の作製には、「食用可能な素材のみを使用すること」、「研究過程において食べられる制度を整えること」という2つの大きな課題があった。これまでの培養肉は、牛肉由来の筋細胞と食用ではない研究用素材で作製していた。
今回、日清食品と竹内教授の研究グループは、独自に開発した「食用血清」と「食用血漿ゲル」を使用することで、食用可能な素材のみで培養肉の作製に成功。
食用血清は、細胞を育てるために必要な栄養成分である「培養液」の素材として使用。食用血漿ゲルは、立体筋組織(培養ステーキ肉)を作製するために必要な細胞の足場材料となる素材。
既存の食用素材だけでは十分な栄養成分の供給や、立体筋組織の構築が困難だったが、今回開発した「食用血清」と「食用血漿ゲル」を使用することで、細胞の生育に適した条件での培養が可能になった。いずれも特許出願中。
この成果をもとに、日清食品が「食の安全」に関する知見を生かして構築した「培養肉」を食べるまでのプロセスについても、東京大学の倫理審査専門委員会から承認された。
「素材」と「制度」という2つの課題をクリアしたことで、産学連携の「培養肉」研究において、日本で初めて「食べられる培養肉」を作製。3月29日には研究関係者による試食も実施した。
従来の機器を使った分析に加え、人による官能評価が可能になったことで、味、香り、食感などの美味しさに関する研究開発が大きく進展。肉本来の味や食感を持つ「培養ステーキ肉」の実用化に一歩近づいた。
日本初の「食べられる培養肉」。日清と東大 - Impress Watch
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