農地ではなく実験室で育てられた培養肉は、世界初の培養肉生産施設がイスラエルに誕生していたり大阪大学が3Dプリンターで和牛肉の構造を再現したりと、技術的には一般的に普及する目前まで来ています。培養肉は環境に優しい一方で、「科学実験で作られたお肉を食べるのは嫌だ」と感じる人も多いという事実を、カリフォルニア大学の研究チームが発表しています。
Would you eat a burger made in a petri dish? Why people feel disgusted by cultured meat - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0272494422000032
Many People Seem Disgusted by The Thought of Eating Cultured Meat
https://www.sciencealert.com/many-people-seem-disgusted-by-the-thought-of-eating-cultured-meat
食肉の育成・生産過程(畜産)は、地球温暖化を止めるには肉や乳製品を食べなくすることが不可欠と言われるほど、多くの温室効果ガスを発生させます。一方で培養肉は、従来の肉と比較してより少ない水を使用し、より少ない温室効果ガス排出量で行えるため、環境面で大きな利点があるとされています。
二酸化炭素排出量を削減して気候変動を止めるにはどうすればいいのか? - GIGAZINE
しかし、従来の肉から培養肉へ切替える一番大きな障壁として、消費者の感覚的・感情的な受容可能性があると論文では述べられています。この研究では、合計1587人のボランティアの培養肉に対する嫌悪感を調査しました。
調査ではまず、肉を食べる人と菜食主義者のグループを募集し、培養肉について製造方法を含む簡単な説明を実施したうえで、「培養肉を食べる」という考えに対する反応をテスト。
また同時に、「ある食べ物を避けたいと思うとき、その原因にあるものは何か?」という質問に実験の参加者たちは回答しました。その回答では、「培養肉は人工的なように思う」「培養だとしても動物由来のものを食べていると感じる」などが挙げられました。
結果的に、合計1587人の参加者のうち、肉を食べる人の35%と菜食主義者の55%が、培養肉に嫌悪感を感じて「味わうことすらできない」と回答したとのこと。この割合は、培養肉が動物の肉に似ていると意識を誘導することで、肉を食べる人では嫌悪感を持つ人が減少し、菜食主義者では嫌悪感が増加しています。つまり、肉を食べる人は「肉っぽくない」と嫌悪感を示し、菜食主義者は「肉っぽい」と嫌悪感を示すという、真逆の反応を見せているということが分かります。
研究チームは「培養肉の普及のために認知的評価を上げる働きをすることは、一方で肉を食べる人と菜食主義者どちらにも同じ感情的な嫌悪感を誘発する可能性があります」と書いた上で、「この嫌悪感の根拠を特定することで、人々が培養肉を拒否する理由を理解し、より人道的で健康的で持続可能な未来を創造する態勢を整えた製品を生んでいくことができる」と述べています。
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