北海道内のスーパーでは普通に見かける羊肉ですが、他の地域では、羊肉は普段使いの食材というわけではありません。
北海道に住んで7年目。私も今では当たり前のように、スライスされた羊肉を自宅で食べていますが、東京で暮らしていた時には、「羊肉を自宅で食べる」というのはちょっと特別なことだった記憶があります。
東京のスーパーに売っている羊肉は骨付きのラムチョップでした。クリスマスや誕生日などに華やかな見栄えがする料理として使ったような気がしますが、決して日常の食卓にあがる食材ではありませんでした。
北海道内のスーパーでは焼き肉用だったり、炒め物用だったり、味付け肉だったり、さまざまな羊肉を選ぶことができます。観光で北海道にやってくると食べるジンギスカンは知っていましたが、家庭でも多様な羊肉料理を食べていることは、道外出身者からするとちょっと意外でした。
北海道内では牛肉、豚肉、鶏肉に続く「第4の肉」としてすっかり定着している羊肉。その消費動向は、全国約9千世帯を対象に家計の動向を調べる総務省「家計調査」の結果にもはっきりと示されていました。
家計調査では全国52の都道府県庁所在地と政令指定都市別に、品目分類ごとの世帯あたり支出金額が示されています。「羊肉」という項目はないのですが、「他の生鮮肉」という項目があります。この項目には牛肉、豚肉、鶏肉ではない生鮮肉がカウントされています。羊肉のほか馬肉や鴨肉、さらに牛豚鶏でも、モツやタンなどのホルモンの生鮮肉はこの品目に含まれています。
道内唯一の調査対象都市である札幌市の「他の生鮮肉」への支出金額は全国で突出していました。第2位が熊本市です。そこで、もう少しさかのぼって、「他の生鮮肉」の消費について調べてみました。
2018年からの3年間は札幌市がトップですが、その前、15~17年は熊本市がトップで、札幌市が2位。さらにその前は札幌市、その前は熊本市。両都市は最近は「他の生鮮肉」の支出金額で抜きつ抜かれつのデッドヒートをしていました。
このデータをどう見るべきでしょうか。地域経済が専門で、特産品を使ったまちおこしなどに取り組む神戸国際大学の中村智彦教授に聞きました。
「熊本市の『他の生鮮肉』は馬肉の消費とみていいでしょう。熊本ではスーパーに普通に馬肉を売っています。北海道での羊肉と同じように普通に食べられる食材になっています」
なるほど、札幌市の羊肉と熊本市の馬肉、「第4の肉」の消費が定着している両都市が、毎年トップを競っているようなのです。
2021年分のデータは総務省が2月8日に発表する予定です。21年は札幌市がV4を遂げるのか、それとも、熊本市がトップを奪還するのか!
ただ、それぞれの都市の関係者に話を聞いてみると、第4の肉を巡る共通の課題も見えてきました。新型コロナウイルスの感染拡大の影響や、美味な肉を巡る世界的な争奪戦もあって、2都市の食卓にも影響しかねないようなのです。
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