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Saturday, July 31, 2021

アグリテックで空気からタンパク質を 環境に優しい飼料作りに英国企業が挑戦 - 日本食糧新聞電子版 - 食の情報源

最新のテクノロジーで革新を起こす企業が相次いでいる。金融業界ではフィンテック、教育業界ではエドテック、食品業界ではフードテック、農業ではアグリテックといわれている。今回紹介するのは、英国のアグリテック企業である「Deep Branch Biotechnology」の単細胞タンパク質を作り出す技術。世界中で「二酸化炭素削減」が叫ばれている中、二酸化炭素から飼料を生み出す技術を開発している。

大学のガス発酵研究者が創業

Deep branchは2018年に創業した英国に本拠地を置くアグリテック企業(バイオ企業)。創業者チームは、ノッティンガム大学の生物学研究センターでガス発酵を研究しており、その後同社を創業。

「二酸化炭素削減」と「持続可能な食糧生産」を同時に解決することを目標とし、微生物を利用して二酸化炭素を高品質の飼料へと変換する技術が注目を集め急成長しているのだ。

微生物を利用して二酸化炭素を高品質の飼料へと変換(Deep branchの公式サイトより)

飼料問題と環境問題を同時に解決

欧州では、畜産業や養殖業の飼料を主に南米から輸入している。魚粉などはペルーやチリの太平洋沿岸、大豆などはブラジルやアルゼンチンが主要輸入先となる。しかし、魚粉においては生産量減少や漁獲調整による増産の困難、魚粉の値上がりなどの問題があり、大豆においても森林伐採や大量の肥料や長距離輸送など課題もある。

また現在、世界で「二酸化炭素削減」が大きなテーマになっている。4月に開催した気候変動サミットでもバイデン大統領は「2030年までに二酸化炭素排出量を2005年比で50%削減する」と表明し、小泉環境大臣も46%削減という目標を示した。また、Deep branchの本拠地である英国では、2050年までに二酸化炭素排出をゼロにするという法案が2019年に可決されており、政府は「クリーンな成長」を後押ししている。

このような飼料問題と環境問題を同時に解決しようと同社が提案するのが、空気から飼料を作り出す技術だ。

共同創業者のPete,Bart,Rob(Deep branch公式サイトより)

参照サイト:
UK startup raises €8m of funding to convert CO2 into animal feed | Farming | The Guardian
Creating animal food from a greenhouse gas – BBC News

消費者からの支持も追い風

Deep branchが製造する高タンパク質の飼料プロトンは、二酸化炭素、水素、水と微生物から独自のガス発酵プロセスによって製造している。つまりほとんど空気をもとにして飼料を作り出している。

しかし、同社の最大の課題は、製造施設を建設・運営するためのコストとそのコストをカバーできる商業規模を拡大することだ。Deep Branchでは欧州の起業助成プログラムなどから投資を受け、さらに英国大手スーパーのSainsbury’sともパートナーになっている。国策だけではなく、大手企業や消費者からの「環境対策や持続可能な製品」への支持が追い風となっている。

独自のガス発酵プロセスによって製造(Deep branch公式サイトより)

欧州において「環境」は、「品質」「価格」や「安全」とともに食品業界における非常に重要な部分として認識されている。食品自体だけでなく、その食品の製造工程も環境によいかが問われており、今回紹介したDeep branchなど最新技術を通して環境問題に取り組む企業にはますます期待がかかっているようだ。(フードライター武田高建)

コラムニスト

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