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Saturday, March 27, 2021

空気の力で走りの質感を大幅アップ!? ホンダ S660ファイナル版“モデューロ X”は只者でないコンプリートカーだった(1/2)|インタビュー【MOTA】 - MOTA

ガチガチのチューニングカーにあらず! 「モデューロX」が目指すのは“上質な熟成”

モデューロXとは、匠の技で上質に熟成させた純正コンプリートカーである

まずおさらいすると、「モデューロX」というのは「Honda車を知り尽くしたエンジニアが、匠の技で上質に熟成させたHonda純正コンプリートカー」である。

「意のままに操れる操縦性」、「所有欲を満たし、走行性能にも寄与するデザイン」、「見て、触れて、乗って実感できる上質感」を実現するため、専用のエアロパーツと足回りを装着するとともに、内外装を専用に仕立てているのが特徴だ。

しかしモデューロXは、見た目を派手にして足回りをガチガチに固めただけの“チューニングカー”ではけっしてない。先に述べたように、モデューロXの本質とは「上質に熟成させたHonda純正コンプリートカー」という点にある。

それは、モデューロXがS660のようなスポーツカーだけでなく、ステップワゴンやフリードといったファミリー向けの車種にも力を入れていることからもわかる。

モデューロXを監修するドリキンが最も重視する意外な事とは

モデューロXの仕立ては、もともと走りにおいては不利な面の多いクルマほど効果は大きい。例えば、背が高くちょっとしたハンドル操作でふらつきがちなミニバンでも、走りの安定感をグンと高めることが出来たのだ。

そのことにより、運転を楽しめるのはもちろんのこと、後席に乗せた奥さまや子供がクルマ酔いしなくなるといったメリットが期待できる。

モデューロXの開発には、ご存知“ドリキン”こと土屋圭市氏が味付けの総料理長として深くかかわっている。そう聞くとちょっと意外と思う方もいらっしゃるかもしれない。

しかも土屋氏は、モデューロXの試作車が出来るとまず後席に座る。奥さまや子供の気持ちになって走りをチェックし、モデューロXの熟成を重ねていくのだという。

解析による数値だけでなく、走り込んで乗り味の最適解を導く

走りのポイントは「実効空力」

そんなモデューロXシリーズは、特別感のある姿と走りの気持ちよさに定評がある。どのモデルもエンジン自体には手が加えられておらず、走りのポイントとなるのが、開発を担当するホンダアクセスが「実効空力」と呼ぶ効果をもたらすエアロパーツと足回りにある。

どうしてそんなことができたのか、そのあたりをもう少し突っ込んで聞いてみた。

テストコースから一般道まで、職人たちが実地を走りながら乗り味を作り込むのがモデューロ流

ホンダアクセスはモデューロXを仕上げる際に、あくまで人の感覚を大事にしている。データ解析による数値だけではなく、そこに現れない乗り味の微妙な部分だ。

ホンダの北海道・鷹栖にあるテストコースの高速周回コース、ワインディングコース、ドイツの一般道を再現したEUコースや、リアルワールドである一般道を、職人気質のある“匠”のメンバーたちが走りながら乗り味を作り込んでいる。

スプリングやダンパーはもちろんとして、実はホイールでも走り味が少なからず変わる。

ホイールひとつから地道に、人間の感覚を頼りにして最適な剛性を探る

ホイールは剛性が高いほうがよいと思われがちだが、実はそうではない。「最適化」という概念を初めて取り入れ、ホンダアクセスではリムとスポークの剛性を変えて、何通りも組み合わせた試作品を履き替えて乗り比べて開発した。

これまたシミュレーションでは実現できないことで、人間の感覚は正確だ。感じるものが大事との非常にお金と手間がかかる作業だが、最終的にS660の場合はリムもスポークもノーマルよりも微妙に数値としては落としたほうがよいという結果となった。

今回の試乗車であるモデューロXと用品装着車の両方に装着されていたホイールは、まさしくこうして開発されたものだ。

エアロパーツのデザイナーがわざわざテストコースに出向く理由

さらにエアロパーツについても特筆すべきは、ドライバーだけでなくデザイナーやモデラーまでもがその場に同行することだ。

すでに空力に関してはこれまで膨大にやってきた豊富なノウハウの蓄積があるので、どのようにすればどうなるかはかなり把握している。とはいうものの、形状を変えることで走行のフィーリングが変わることを、デザイナー自らがいっしょに走り込んで確認し、目指すところに向けて煮詰めていくことで、さらなる熟成を進めていった。

ホンダ/S660

空気を味方につけ、走りの質を高めていくという設計思想

S660のように、もとの素性がよく基本性能の高いクルマほど、やったことが素直に現れるという。

S660を担当した商品企画部の松岡 靖和氏によると、空力というと燃費が主体で測定機器もそういうものしかなく、操縦安定性にかかわる空力は、走り込んで最適解を導くのが一番と考えていて、気が遠くなるほど細かいが、とても楽しい作業だという。

S660 Modulo Xが目指したのは『小さなGT3』!?

『S660モデューロXは、「小さなGT3※を創る」つもりで開発しました。ただし、レースカーをつくりたい訳ではありません。走る楽しさを追求して開発して、それによってクルマの動きがしなやかでリニアで思った通りに動く。ボディしっかりしていて足まわりが使えている、乗り心地もよく、スポーツカーだけどロングツーリングにも使える。そんなところを狙いました。

直進性はもちろん曲がるフィーリングを重視していますが、それにはエアロガイドフィンという空力の造形処理により、ステアリングを切った状態でタイヤが外に出ても、風をより外に逃がしてタイヤに当てにくくして乱流を抑えることで、リニア感と接地感が増すほか、ヨーが急に立ち上がったり減ったりすることもなく、段付き感がなくなります』(前出 松岡氏)

※GT3:市販スポーツカーをベースにしたレース参戦用の競技車両カテゴリー。NSXをはじめ、ポルシェ 911や日産 GT-Rなど世界の名だたるスーパーカーがGT3用の高価な市販モデルを用意している。

もはやF1マシンの世界! 導入した空気を有効に後ろまで流すことで、4輪全ての荷重をしっかりかけることが出来た

そして、あくまで人の感覚を主体に開発し、後で解析したところ、それを証明する興味深い結果が得られたという。

開発部の湯沢 峰司氏によると、『結果がそうなるといいなと考えながら作ったのですが、床面の空気の流れを調べると、まさしくそのとおりで、最後まで主流が流れているのが明らかです。

後ろまでしっかり届き、ディフューザーに流していて、リヤもしっかり効果が出ていています。結果、後輪にも荷重が載って4輪均等にタイヤが使える状態が続いています。

コーナーに入ったときも、ノーマルはタイヤの乱流によって、外側の風が内側に流れ込んでいくところ、モデューロXは外側にけり出していくので、乱流が少なっていることわかります』とのことだった。

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岡本 幸一郎

筆者岡本 幸一郎

ビデオ「ベストモータリング」の制作、雑誌編集者を経てモータージャーナリストに転身。新車誌、チューニングカー誌や各種専門誌にて原稿執筆の他、映像制作や携帯コンテンツなどのプロデュースまで各方面にて活動中。記事一覧を見る

監修トクダ トオル (MOTA編集長)

新車の見積もりや値引き、中古車の問い合わせなど、自動車の購入に関するサポートを行っているMOTA(モータ)では、新型車や注目の自動車の解説記事、試乗レポートなど、最新の自動車記事を展開しており、それらの記事はMOTA編集部編集長の監修により、記事の企画・取材・編集など行っております。MOTA編集方針

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