コクうま和風ローストビーフ 撮影/廣瀬靖士
年末年始ぐらいごちそうを食べたいけど、特売の肉や魚ってイマイチおいしく料理できなくて……。
「そのお悩みちょっとしたテクニックで解消できます!」
お金はかけず手間で勝負、肉と魚を極上にする!
教えてくれたのは食文化研究家のスギアカツキさん。
「安い肉で気になるのがかたさ。“保水力を上げる”“酵素で繊維をほぐす”で解消できます。肉に酢やヨーグルトを加えると肉が水分を保持しやすくなり、やわらかくジューシーな食感になります。筋肉の組織をゆるませる食塩、肉の脂分と溶け合って繊維をゆるめるオリーブオイルも強い味方。
一方、塩こうじ、玉ねぎ、パイナップルなどに含まれる“プロテアーゼ”という酵素は、タンパク質をアミノ酸に分解して肉の繊維をやわらかくし、うまみも増やします」(スギさん、以下同)
スギさん自身、鶏肉や豚肉をパイナップルに漬けて、照り焼きチキンやしょうが焼きにするのが定番。フルーティーな甘さがマッチする。
「臭みが気になるひき肉などはスパイスでマスキングします。クローブやシナモンなどの刺激的な甘い香りが効果的」
スパイステクニックは、肉だけでなく魚の生臭さを抑えるときにも使える。
「料理酒もおすすめ。魚の生臭さの原因は“トリメチルアミン”というアルカリ性の成分なので、弱酸性の日本酒やワインで中和されるしアルコール自体の香り成分でもスッキリと抑えられます」
賞味期限ギリギリ品や解凍品は手当てが肝心
閉店直前の見切り品や買いだめした冷凍品を解凍したものなど、鮮度が気になる肉や魚でも復活の道はある。
「肉も魚も古くなると、においやぬめりが出てきます。そういったときは臭みの原因を水で流してサッと下ゆでを。アク、臭み、雑味が取れます」
異臭やひどい変色があれば見送るのが賢明だが、多少のにおいやぬめりはこれで解決。
「食材のポテンシャルを引き出すテクニックをぜひ活用してほしいです」
ステーキ肉の格上げテク
外国産もやわらかく!
厚みのある肉は、安い肉だとかたくて食べられない! そんなお悩み払拭テクをご紹介。比較的安価な外国産の肉は脂肪(サシ)が少ないため味にコクがなく、そのまま焼くとかたくゴワついた食感になるのが弱点。
「肉の保水力が上がる酢、筋繊維をほぐすオイル、酵素でやわらかくするみそやしょうゆ、縮みを防ぐはちみつなどを活用すれば、風味と食感を底上げできます!」(スギさん)
肉と調味液をポリ袋に入れて冷蔵庫に2時間程度置く、またはひと晩程度漬け置きもOK。同様の方法で豚肉を漬ければポークステーキにも応用できる。豚肉の場合は肉の中心までしっかり火を通そう。
テク1:マリネ液に漬ける
やわらか&しっとり感アップ
【酢大さじ1、オリーブオイル大さじ2、砂糖小さじ1、塩少々】に漬けたステーキ肉はやわらかくジューシーな焼き上がり。表面はこんがりしているのに内部の水分はキープされ、肉汁がジュワ~ッと楽しめる。
テク2:みそに漬ける
漂う芳香&ソフトな歯触り
【みそ大さじ2、水大さじ1】に漬けたステーキ肉は香ばしさがダントツ。みその香りで輸入牛肉が持つ独特のにおいが気にならない。こうじが多く使われているみそを使うと、やわらかさがアップする。焦げやすいのでみそを拭き取ってから焼こう。
テク3:生しょうゆ+はちみつに漬ける
コク深い味&程よい弾力
【生しょうゆ大さじ1、はちみつ大さじ1/2、水大さじ1】に漬けたステーキ肉は、うまみが増して肉の食感もしっかり楽しめる。しょうゆは非加熱の生しょうゆを選ぶのがポイント。酵素が生きているのでタンパク質が分解されてやわらかくなる。
高級感漂うミディアムステーキの作り方
焼く前に冷蔵庫から出して室温に戻す。フライパンを中火で熱して肉の両面を2分ずつ焼き、取り出してアルミホイルに包み10分ほど置く。
*焼きたての肉をすぐ切ると肉汁が出てしまうため保温して休ませるのがポイント。肉の中心にゆっくり熱が伝わり、カットするとほんのりロゼ色の仕上がりになる。お好みのソースをつけていただく。
ちょっと違った!?ネット情報を検証
インターネットで見かける、肉をやわらかくするコツの中にはビミョーなものも。
パイナップルやキウイフルーツと牛肉を漬けると、変色したり肉の表面が溶けたような状態に……。見た目のおいしさもキープしたいステーキ肉には不向き。
炭酸水(無糖)
肉から味が抜けて食感はバッサバサ……。漬け込んだ後の液体が赤く染まっていたことから、肉汁が大流出してしまったと推測。
塩+砂糖
漬け込んだわりに劇的な変化は感じられず。同じ塩分と糖分を加えるなら、生しょうゆとはちみつのほうが効果的といえる。
編集部で6種食べ比べてみました
そのまま焼いただけのステーキ肉を基準に5つのテクを比べると、食感、肉汁、味わいのバランスがいちばんよかったのは「マリネ液」。
次点の「みそ」「生しょうゆ&はちみつ」もやわらかさはアップ。ほんのりみそやしょうゆの香りがするのは好みが分かれるところ。炭酸水、塩+砂糖はステーキ肉には不向きだった。
ブロック牛もも肉の格上げテク
大きいからってビビらなくてOK
ローストビーフは作るほうが断然安上がり!かたさが気になる輸入牛肉もテク活用でレストラン級の味に。
「塩こうじに含まれる酵素が肉のタンパク質を分解するためです。肉の食感をやわらかくするとともに、分解されたタンパク質がアミノ酸に変わってうまみが増します。肉の中心まで程よく火を通すとかみ切りやすく、しっとりした食感になりますよ」(スギさん)
テク:塩こうじに漬ける
短時間でやわらかくうまみも増す
牛肉の表面に塩こうじをまんべんなく塗ってポリ袋に入れる。2時間ほど漬け込むだけでも塩こうじが肉に浸透し効果を発揮!
時間があるときは前の晩から漬け込むとよりやわらかくジューシーに仕上がる。肉は焼く前に室温に戻すと焼きムラができない。
コクうま和風ローストビーフ
こうじの力でうまみアップ!
材料と【作り方】2~3人分
(1)牛塊(ローストビーフ用)200~300gの表面に塩こうじ大さじ2を塗り、密閉して冷蔵庫にひと晩置く。急いでいる時は2時間程度常温に置く。
(2)熱したフライパンにオリーブオイル大さじ1を薄くひき、肉の表面を全面こんがり焼く。2重にしたホイルにぴったり包み、フライパンに戻す。極弱火でフタをして上面下面それぞれ5分温める。火を止めてそのまましばらく置く。
(3)すぐに食べない場合は、冷蔵庫へ。しょうゆこうじ大さじ3、ごま油大さじ2、はちみつ大さじ1を合わせてタレを作る。肉を薄くスライスして、皿に盛り付け、タレと黒こしょう適量をふり、お好みで薬味を添える。
鶏肉いろいろ格上げテク
部位によって変えてみて!
安価な鶏肉をパサつきなし、臭みなし、うまみは増し増しにするには、部位ごとにアプローチを変えるのが得策。
「肉がかたくなりやすく淡泊な味のむね肉やささみは、玉ねぎや果物の力で食感がソフトに、フルーティーな甘みもつきます。骨付き肉は、ゆでるだけでぬめりや臭みがとれますよ。もも肉の鶏臭さはヨーグルトでマスキングしましょう」(スギさん)
むね肉、ささみテク:玉ねぎやパイナップルに漬ける
脂肪分が少ないのでパサつきがちな部位。タンパク質分解酵素を含む玉ねぎやパイナップルのすりおろしをなじませるとしっとりやわらかい食感になる♪
すりおろしをペーパータオルなどでぬぐってから調理に使う。
手羽系肉テク:洗って下ゆでする
手羽元、手羽中、手羽先といった骨付きの鶏肉は、サッと洗ってから沸騰した湯に投入!
肉の表面の色が変わってアクが出てきたらザルに上げて水洗い。この一手間で臭みが抜け、煮ものなどの味がクリアになる。
もも肉テク:ヨーグルトに漬ける
うまみが強くやわらかい部位ではあるものの、脂が多いので臭みが出やすい。乳酸が豊富なヨーグルトに漬けることで特有のにおいをカバーしつつ、さらにやわらかくジューシーになりうまみもアップ。香辛料を足せば無敵!
スパイス香るやわらか唐揚げ
ヨーグルトとスパイスでやわらかさとコクアップ
材料と【作り方】2~3人分
(1)鶏もも肉400gは大まかに切り(唐揚げ用サイズ)、ポリ袋に入れて肉用ミックススパイス大さじ1/2、ヨーグルト大さじ1、はちみつ大さじ1/4、おろしにんにく小さじ1/4、しょうゆ大さじ1/2をすべて混ぜたものでもみ込む。
(2)ひと晩冷蔵庫に置くか、常温で2時間置いておく。
(3)揚げる前に溶き卵1/2個と小麦粉大さじ5に絡める。
(4)焦げないよう低めの温度、160度の油で4~5分揚げる。
ひき肉の格上げテク
いつの間にか変色……。
塊肉やスライス肉に比べ、表面積が多いひき肉は酸化しやすく傷みや変色のスピードが速い。また、いろいろな部位の肉を混ぜてミンチにするため脂のにおいが気になることも。
「ひき肉の強い味方になるのがスパイス! シナモン、クローブ、クミンなどの香辛料が持つ強い香りで驚くほど肉臭さが消えます」(スギさん)
テク:スパイスでマスキングする
臭みをなくす!
豚ひき肉のマスキングはウスターソースでキマリ!
唐辛子、しょうが、シナモン、クローブ、ローレル、タイムなどの複雑な香りが臭みをカバーし、玉ねぎやにんにくの風味もマッチして豚肉だと気づかないほど。牛や鶏のひき肉でもお試しを。
なつかしミートグラタン
ひき肉たっぷりで食べ応えアップ
材料と【作り方】2~3人分
(1)マカロニ100gをゆでる。
(2)熱したフライパンに豚ひき肉150gを入れて炒める。火が通ってきたら、ケチャップ大さじ2と1/2、ウスターソース、粉チーズ各大さじ1を入れてさらに炒めて火を止める。
(3)耐熱皿にバター少々を塗り、マカロニ、ホワイトソース1缶分、ピザ用チーズ70g、(2)をのせ、トースター(1000W)で10分ほど表面においしそうな焼き目がつくまで焼く。
冷凍・賞味ギリギリ魚格上げテク
やっぱり鮮度が命……?
「魚は取れたてがいちばんだと思いがちですが、熟成させるとさらにおいしくなります。おすすめは下味をつけて保存すること。
魚にはイノシン酸が含まれていますが、調味料で別のうまみをプラスするとうまみの相乗効果が生まれます。昆布だしのグルタミン酸、カキを原料にしたオイスターソースのコハク酸は相性バッチリです」(スギさん)
パサつきを抑えたい魚料理には、塩こうじやみりん、油分(オイルやマヨネーズ)を加えるとふっくら食感に!
テク1:塩こうじ&昆布だしで漬ける
そのまま焼いて料亭の味!
ポリ袋に切り身魚、塩こうじ、顆粒の昆布だし、みりんを入れて冷蔵庫へ。翌朝、オーブントースターでこんがり焼けばうまみが凝縮した焼き魚のできあがり。
そのままご飯のおかずにしてもいいし、椀種として汁ものにすると上品な一品になる。3割引きシールの切り身魚でぜひ試して。
テク2:ハーブをきかせる
白身魚におすすめ!
淡泊な白身魚には、タイム、フェンネル、タラゴン、バジルのようにやさしい香りのハーブがおすすめ。魚臭さをカバーしながらさわやかさがプラスされ本格的な味になる。複数のハーブがミックスされたスパイスソルトが手軽。
テク3:生しょうゆ&オイスターソースで漬ける
やわらかくコクもUP
赤身魚のブリや青身魚のサバなどは、生しょうゆの酵素で食感がふっくらし、濃厚なオイスターソースで味に深みが出る。魚臭さ解消にはカレー粉やにんにくなどパンチのある香りが有効。香気成分によるマスキング効果でにおいが気にならない。
まろやか♪タラの香草パン粉焼き
マヨネーズでにおいもうまみもマスキング
材料と【作り方】2人分
(1)タラ切り身2切れにミックススパイス小さじ1を振り、なじませて冷蔵庫で休ませる。すぐに調理したい場合は30分~1時間前に。
(2)(1)の水分をペーパータオルで取り、マヨネーズ大さじ4を全体に塗ってパン粉大さじ6をまぶす。
(3)オリーブオイル大さじ2を全体に振り、トースター(800~1000W)で15分ほど焼く。お好みの野菜と盛りつける。
濃厚ブリカレー
カレースパイスはうまみや食感の強い魚と相性よし!
材料と【作り方】2~3人分
(1)ブリ切り身2切れを生しょうゆ大さじ1、オイスターソース大さじ1/2、酒大さじ1と1/2に漬け込み冷蔵庫で30分~1時間ほどなじませる。
(2)パプリカ赤、黄それぞれ1/2個ずつとピーマン2個を小口切りにする。
(3)鍋にレトルトカレー2人分と水大さじ2、漬け汁をきったブリ、(2)を入れて火にかける。時々かき混ぜて5分程度煮込み、ブリに火が通れば完成。温めたナンを添える。
賞味期限ギリ食品の下味調理は素手厳禁!加熱しても死なない菌にご用心
肉や魚を調理するうえで気をつけたいのが食中毒。冬だからとはいえ、家の中は温度が高い時間帯も長く、注意が必要だ。
「牛・豚・鶏肉、魚が保菌していることが多いウェルシュ菌は、100度で6時間の加熱にも耐えます。空気が嫌いな菌なので煮込むときはよくかき混ぜましょう。肝心なのは菌をつけない、増やさないこと。
手にもさまざまな菌やウイルスが付着しているので、生の肉や魚は素手で触らずに菜箸やトングを使い、まな板や包丁の接触は最低限に。調味料をもみ込むときはポリ袋の中で行いましょう」(スギさん)
長時間漬け置きしたいときは特に気をつけよう。
レシピ・調理/スギアカツキ 取材・文/廣瀬亮子 撮影/廣瀬靖士
《検証》外国産・見切り品・冷凍…「安い肉・魚」をおいしくする!食のプロに聞いた“格上げテク” - au Webポータル
Read More
No comments:
Post a Comment