セブンイレブンのナゲットやツナおにぎりなどへの植物性材料を提供している、代替肉ベンチャーのDAIZ(ダイズ)が、価格高騰に悩まされている「卵」の代替製品を開発したことを発表した。
市場投入は2024年中を想定。業務用液卵と混ぜるハイブリッド食品として、メーカーや外食産業などを想定した商品化に向けた取り組みを進めていく。
供給不足や価格高騰を背景に代替卵を開発する企業が続々と出てきている中、ダイズはどんな戦略を描くのか?
代替肉ベンチャーが「代替卵」を開発
卵不足や価格高騰に、代替卵に対する期待が高まっている。
画像:ダイズ
ダイズでは、同社CTOの落合孝次氏が開発した特許技術「落合式ハイプレッシャー法」を活用して、大豆をベースとした植物肉「ミラクルミート」の開発と量産を進めてきた。
この7月には、セブンイレブンの新商品「みらいデリ」の商品を共同開発したことを発表。それ以前にも、フレッシュネスバーガーへの大豆パティの提供や、焼肉きんぐへのミラクルミートのツナの提供など、「植物肉」の提供実績を積み上げてきた。
ダイズの大豆パティを使ったハンバーガー。
撮影:三ツ村崇志
ただ、こういった商品開発の間に、ダイズでは「植物肉」だけではなく、植物性食品を用いた「代替卵」の研究開発も続けていたという。
今回、ダイズが開発した次世代植物性液卵「ミラクルエッグ」は、鶏卵と混ぜ合わせての使用を想定している※。ダイズによると、大豆を原料にしながら鶏卵と同じ温度・加熱時間で固まることはもちろん、風味なども違和感がなく仕上がり、基本的に、既存の卵加工品と同じ製造インフラ・同じ調理法を用いることができるという。
※含まれている栄養まで卵と一致しているわけではない。
ミラクルエッグ単体でも使用できないことはないというが、
「単体で使用すると、卵とまったく同じ風味ではないため、100%液卵の代わりとはいいがたい。もしそのように使うのであればフレーバーの追加など、さらに改良が必要だと考えています。
ただ弊社はミラクルエッグを鶏卵の代わりに市場に広める、という目標ではなく、あくまで鶏卵市場と共存する『ハイブリッド戦略』で市場への参入を目指しています」
と、基本的に鶏卵と混ぜ合わせたハイブリッド液卵としての利用を想定している。
各社しのぎを削る、「代替卵」レース
ダイズが開発したミラクルエッグ。左側が液卵と混ぜ合わせたもの。右側がミラクルエッグ原液。
画像:ダイズ
代替卵の商品は、ここ数年増えてきている。国内では、キユーピーが製造するHOBOTAMAや、2foodsブランドから提供されているevereggなどがある。ただ、どちらも「液卵」の代わりではなく、スクランブルエッグなどの特定のメニューを代替するものだ。
液卵の代わりになる商品としては、この2月にスタートアップのUMAMI UNITEDがこんにゃくなどを用いたUMAMI Eggを発売。また、海外ではアメリカのスタートアップであるEatJustが開発するJUSTEggが知られている。
鶏卵は加熱すると固まったり、かき混ぜると泡立ったりと、さまざまな特性を持っている。植物性の原料で卵のこういった特性を再現することは非常に難しく、各社、この性質をうまく再現するために素材の試行錯誤を繰り返して商品を開発してきた。
ダイズのミラクルエッグの原料は、植物肉と同様の大豆だ。ただ、ダイズでは、大豆に含まれる植物性たんぱく質を動物性たんぱく質の分子構造に近づける独自技術を開発することで、鶏卵と同じゲル強度・ゲル弾力を再現し、鶏卵(液卵)と同じ温度、時間で熱凝固することを実現したという。
大豆以外にも「菜種、えんどう豆・緑豆など、さまざまな植物性たんぱく質を用いたミラクルエッグの生産が可能だと考えています」と、ダイズ広報はBusiness Insider Japanの取材に答えた。
現状、商品化に向けて具体的に動き出している取り組みはないと言うが、ダイズとしては2024年中に、外食産業や食品メーカーなどへ販売する業務用商品としての提供を想定しアプローチしていくとしている。
なお、価格については「商品化、具体的な価格設定などは、検討前なためお答えを控えさせてください」とした。
ハイブリッド戦略で植物食品需要は広がるか?
ダイズも共同開発したセブンイレブンの新商品「みらいデリ ナゲット」。植物肉と通常の肉のハイブリッドだという。
撮影:杉本健太郎
ミラクルエッグで、100%代替ではなく既存の卵と混ぜ合わせる「ハイブリッド戦略」をとるダイズだが、これは代替肉での取り組みと同じ流れによるものだ。
実は、ダイズが7月に発表したセブイレブンとの共同開発商品も、植物肉と従来のお肉のハイブリッドタイプだった。
ハイブリッド商品の流れは、植物性の食品で既存の肉のおいしさに近づく限界が見えているということなのか。
ダイズの広報は、「まったくそんなことはありません」とした上で、
「ただ、ミラクルミートの本格販売を始めて約3年ほどですが、特に日本の消費者の方に、『植物肉100%』で食べていただくことのハードルの高さを感じてきたのは事実です」
と話す。
ダイズでは販売開始当初より、植物肉100%の商品に加えて、ハイブリッド商品の提案も進めていた。これは、「まず、食べていただく(きっかけ)がなければ意味がない、おいしいと思ってもらわないと根付かない」という課題感からだった。
ハイブリッド商品の流れは、ダイズと提携を結んでいるフランスの植物性原料ベンチャー・Roquette社をはじめ、欧州企業とコミュニケーションを取る中でも感じたことでもあるという。
ダイズとしては、「肉の代わりに植物肉を食べる」という「植物肉第一期」を経た現状を「植物肉第二期」と捉え、改めてハイブリッド戦略を打ち出していく方針だ。
「植物性100%、食べるハードルある」植物肉ベンチャーのDAIZが「ハイブリッド」の代替卵を開発 - Business Insider Japan
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