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真夏に屋外を歩いていると時折、ミストを噴霧している場所を見かける(図1)。なんとも涼しげである。だが、元空調エンジニアの筆者は面倒なことに、すぐに空気線図*を頭に浮かべて考えてしまう。どのくらい効果があるのだろうか、と。
* 空気線図 空気の乾球温度、湿球温度、露点温度、相対湿度、絶対湿度、比エンタルピーなどの関係を表した線図。いずれか2つの状態値が分かれば、他の状態値も全て求められる。湿り空気線図とも言う。
水は蒸発するときに周囲から熱(気化熱)を奪う。すると空気の温度が下がるので涼しくなる。ポイントは蒸発できる余地がどれだけあるか。カラッとした天候ほど、水はよく蒸発して温度が下がりやすい。逆に相対湿度が高いジメジメとした天候では、ミストをまいてもほとんど蒸発しないので、空気の温度は下がりにくい。
空気線図を見れば、その違いは一目瞭然だ(図2)。水が蒸発するときに奪った熱(エネルギー)は、蒸発した後の水(水蒸気)が蓄えるので、空気全体を見るとエネルギーの増減はない(断熱変化)。従って、ミストが蒸発したときの空気線図上の変化は、比エンタルピー軸に沿って相対湿度100%の曲線と重なる点まで変化する(等エンタルピー変化)。
例えば、気温30℃で相対湿度40%の状態でミストをまくと、最大でおよそ20℃まで温度が下がる(図2[1])。一方、気温は同じ30℃でも相対湿度が60%の時は、温度低下は24℃くらいまでが限界だ(図2[2])。湿度が高い日本の夏では、ミストが力を発揮しにくいのだ。
とはいえ上記は空気を冷やすときの話。人体を冷やすとなると、皮膚や服に付着したミストが蒸発したり、ミスト自体の冷たさで体を冷やしたり、冷却効果の説明は複雑になる。ただし、こうした人体の冷却は体がぬれるのを前提としている。ぬれたくない人にとって、やはり湿度が高い気候ではミストの恩恵は小さいだろう。
日本の夏にミスト冷却は有効か、暑熱対策に新システム - ITpro
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