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Friday, July 29, 2022

空気振動すべてが大野和士の指揮棒に吸い付いている趣…オペラ「ペレアスとメリザンド」 - 読売新聞オンライン

 森で独り泣いていた謎の女性が、ある王子に めと られるも、王子の異父弟と愛し合うようになる――ドビュッシーの傑作オペラ「ペレアスとメリザンド」が、ついに新国立劇場で完全上演された。エクサンプロヴァンス音楽祭、ポーランド国立歌劇場との共同制作。

 今回の立役者は、なんと言っても指揮をとった芸術監督・大野和士である。ドビュッシー特有の浮遊する管弦楽が、ほんのりと、かつたっぷりと大劇場を満たしてゆく。たとえば第2幕、洞窟のシーンへ移るときの、底なし沼を思わす弦楽器のトレモロ。そして洞窟に月光が すと、響きが光となって本当に上方から降ってくるのだ。当夜のオーケストラ、東京フィルハーモニー交響楽団ばかりではない。空気振動のすべてが、大野の棒に吸い付いているといった趣である。

 もちろんこれも、優れた歌手あってこそ。アルケル王は妻屋秀和、王子の息子イニョルドは前川依子(急な代役で好演)と、脇もしっかり固め、ロラン・ナウリの居丈高な王子ゴローがよく映える。異父弟ペレアスのベルナール・リヒターは「語る歌」で、メリザンドとの 逢瀬おうせ にのぞむ第4幕は言語劇のよう。そのメリザンドは、カレン・ヴルシュ=写真中央立ち姿=。音程こそ時に危ういものの、幼女のような声が臨終の場面で一転、達観の神々しさを放つのには驚いた。

 ケイティ・ミッチェルの演出については、巧妙と呼んでおこう。ペレアスとメリザンドが性交に及ぶときては、ほのめかしが身上の本作の香りは吹っ飛んでしまうのだが、それでも自然に見えるのは、すべてをある花嫁の(結婚式後の?)夢として描いているから。そして夢の非論理性を、美術と身体動作で克明に視覚化してみせるから。あぶり出したかったのは、家父長的暴力か。

 降参、いや脱帽の一夜であった。(音楽評論家 舩木篤也)

 ――6日、初台・新国立劇場。

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