月城流通研究所 月城聡之
新型コロナウイルスによる規制が徐々に緩和される中、外食や旅行にも復活の兆しがみられることから、昨年よりは内食需要は落ちることが想定される。
その代わりに観光地やバーベキュー場が近隣にあるような立地の店舗は、極端に売上げが伸びることが予想されるため、過去最大の夏と同じレベルの発注を行う必要がある。
相場は引き続き高い。輸入肉は、牛豚鶏羊のどれを取っても先月に引き続き高い状態を保つことが予想される。
コロナによる物流の遅れ、ウクライナ危機に加えて、干ばつの影響もあり、二重苦、三重苦となった状況である。輸入肉が高いため、国産の肉に需要が高まり、国産も比較的余裕なく逼迫することが考えられる。
むしろ、いまある高い原料をいかに上手に活用して、「売上げに変えていくか」がポイントとなる。特に「肉塊」「極厚」といったアイテムは、いままでの商品化の延長線で商品化できるため、商品化は難しくない。
いままでと同じ作業で、見た目のインパクトは商品自体が主張してくれるので、ぜひ取り組んでもらいたい。
ゴールデンウィークについても、全国的に新型コロナウイルスによる規制がほぼない状態の連休の再開といえるものだった。
これによって、アウトドアのバーベキュー需要が高まり、バーベキュー施設やアウトドア観光地は、バーベキュー商材をはじめブロック肉が飛ぶように売れた。
今年は食肉全体の相場が高く、特に輸入肉にその傾向が強いため、国産に注目が集まっている。
比較的安価な鶏肉のバーベキュー商材として、レッグや中抜きなどを販売する店も増えている。中抜きはクリスマス商材だけでなく、年間通して販売する商材となっている。
輸入肉の相場が高騰しているため、いままで焼肉商材の定番として販売していた「牛タン」は、販売を控える企業も出ているが、国産牛で代用して、むしろ利益を得ている企業もある。
チルドのムキタン、冷凍のムキタン、味付けのタンスライスなど、需要の高い牛タンの選択肢を増やしたアプローチでの取り組みも、相場高の中では効果的である。
精肉
国産牛芯タン焼肉用(100g当たり1580円)
焼肉には欠かせない定番の牛タン。輸入牛タンの価格が上がり、国産牛タンの価格に近づいているだけでなく、外食がコロナ禍で買い控えたこともあって国産牛タンを仕入れることが以前よりも容易になった。
インストア加工で、国産の牛タンを皮むきから加工できる店舗は狙い目。競合との差別化ができるだけでなく、店舗のへ消費者からの信頼度が高まる。
皮付きの牛タンの歩留まりは、皮、タン先、タン元の脂肪などをトリミングすると約65%になる。カット技術も必要である。タン元は1cm以上の厚みを取って、タン下や周りの赤い部分をトリミングして「芯タン」で提案。外食店で人気のタン元の提案の方法を取り入れる。
通販で売れているタン元焼肉用は、輸入のタン元を1枚50gにカットし、スリットを網目に入れて、食べやすくしている。
国産のタン元の価格はトリミングして芯にしているため、通常の1.5倍程度の価格設定でも良い。牛タンの品揃えのカテゴリーを見直して、品揃えの幅を増やしてもらいたい。
トレーは、立体感が際立つ青果のトマト用の厚みのあるふたを使用し、ボリューム感と高級感を演出する。残ったタン下やタンの周りの赤い部分は、「切り落としタン」で商品化する。
国産黒毛和牛カタロース(カタロース芯、ザブトン)焼肉セット(100g当たり690円)
黒毛和牛カタロースを小割りし、「カタロース芯」と「ザブトン」を使用した「焼肉セット」を展開する。
異なる部位を組み合わせるよりも、同じ部位で1つの真空パックから商品を作ることで、たくさん真空パックを開けて処理する必要がなくなる。
使用するのは、「カタロース芯」部分と「ザブトン」部分で、焼肉には適さないネック側は、「切り落とし」や「スライス」、ロース側は「ステーキ」や「スライス」で商品化する。
カブリやカタコブは切り落としに混ぜてスライスすれば、歩留まりが下がらない。
最近は小袋の「岩塩」や「ハーブソルト」「本ワサビ」などが各メーカーから出回っているため、部位の特性に合わせた調味料を添付するとおもしろい。
「ザブトン」部分は、はサシが入り、脂肪分が多いため、ワサビで食べる提案も良いだろう。
「カタロース芯」はステーキソースを添付して、焼肉でステーキの味を味わう提案など工夫ができる。
米国産1枚ハラミ肉塊(100g当たり498円)
8月は夏休みでもあり、アウトドアやキャンプに最適なバーベキュー商材を効率的に販売して売上げにつなげていく。
見た目のインパクトも強い、ブロック肉を「肉塊」として販売して、消費者購買欲求を高める。
部位は、「アウトサイドスカート」や「フランクステーキ」など、消費者も焼いてカットすれば食べることができる部位で訴求。
「ハラミ」は、基本、「アウトサイドスカート」から作られる部位名称である。
「サガリ」は、「ハンギングテンダー」から作られる部位名称である。
「ハラミ」と「サガリ」を合わせて商品化するのもおもしろい。多くの焼肉ファンの支持を集めることになるはずだ。
アウトサイドスカートは外食店でも「1本ハラミ」などで人気があることから、小売店でもインパクトが出るはずだ。
輸入牛肉の相場が高騰する中、輸入牛を売るためには形を変えて提案することもポイントとなる。
肉塊のような少し重量が必要な商品は、まだ国産よりも輸入牛の方が相対的に安く販売できるので、適材適所で提案をしていく。
肉惣菜
鉄板だし巻き卵黒毛和牛載せ(880円)
今年の肉惣菜の「スーパートレンド」と言っても過言ではない「だし巻き卵」。
黒毛和牛スライスに牛丼のたれを付けて鉄板で焼いたものをだし巻き卵に乗せると、「鉄板だし巻き卵黒毛和牛載せ」が完成する。
だし巻き卵はスーパーマーケットの惣菜の注目商品で、弁当に入れる卵焼きも冷凍の市販品から、店内手作りに変更するところが増えてきている。
「卵焼きブーム」ともいえる状態で、そこに「和牛」を付け加えて「ハレの日」アイテムとして演出してもらいたい。
この商品のメリットは、オペレーションが実に簡単であること。肉惣菜の中ではあまりない「黄色」の卵焼きがアイキャッチとなる。
惣菜で販売するだし巻き卵よりも単価アップが図れ、店舗としても売上げアップにつながる商品といえる。だし巻き卵を店舗で製造する場合、和牛こま切れを鉄板で焼いて「牛巻き卵」(うなぎを巻いたう巻き卵の牛版)で商品化しても、トレンドになる予感もする。
長崎和牛バラ、モモ焼肉セット(冷凍、150g1480円)
冷凍の技術が進歩を遂げている。冷凍食品の品揃えが増えたのは、おいしい冷凍食品が作れるようになったことも要因の1つといえる。
テレビでもたびたび登場しているように、ブラストフリーザーなどで瞬間冷凍するのではなく、CAS冷凍(食品中の水分を過冷却状態にして一気に凍らせる技術)やプロトン凍結(磁石、電磁波、冷風を組み合わせて食品を瞬時に凍らせる技術)などさまざまな凍結のさせ方がある。
寿司など、生ものも現在の凍結技術を用いれば、ほぼ生で食べたときの味や食感が損なわれることなく冷凍できる。
精肉でも冷凍技術が発達してきたこともあって冷凍の馬刺しだけでなく、焼肉なども「冷凍スキンパック」で登場してきている。
商品化は板トレーに肉を並べてスキンパック。冷凍をかけて冷凍コーナーで販売する。当然ながら賞味期限はチルドよりも長く、半年程度の賞味期限を設定することができる。そのため、管理もしやすく在庫切れをする心配も少なくなる。
デメリットとしては、「スキンパック」や「深絞りパック」などは、通常のストレッチラップ(一般的に使用される発泡トレーにラップをしたもの)とは異なり、肉が空気に触れないため、酸化して発色しないことである。
そのため、スキンパックの商品は、色が通常よりも濃く、一部退色してしまうことも発生する。
酸素透過性の高いフィルムを使用すれば発色は幾分か改善されるが、酸素が透過する分商品劣化も進む。メリットが産まれる分、デメリットも生まれる。
欧州ではスキンパックを使用する場合は、この事実を消費者に教育しながら販売を行っている。発色していなかったとしても、品質に問題はないということも、一緒に消費者に伝える努力をしているため、このような商品が一般的に流通できているのである。
今後、バックヤードの人員確保が困難になってくるため、商品のアウトパック化が進み、このようなスキンパック商品なども多く流通するようになる。
冷凍ケースがいまだに10年前と同じ品揃えになっている企業は、すでに時代から取り残されていると言っても過言ではない。
トレンドアイテム
米国産豚リブロース極厚ステーキ用(100g当たり148円)
今年は「極厚」がポイントとなる。3cm厚の極厚ステーキを豚のリブロース部分で提案する。
豚ロースの中でもリブロース側はランプ側に比べて肉に味があっておいしいため、ステーキで提案する。厚切りで2cm厚は一般的に販売されているが、価格を気にして厚切りも定番のロース切り身も、厚みに大きく差が出なくなってしまい、結果的に差がなくなってしまった店舗もあるのではないかと思う。
しかし、桶トレーの深さいっぱいに肉が盛り上がっていれば、同じロース切り身でも迫力が出る。単なるロース切り身にもかかわらず存在感が出るため、トレーも深型のトレーにして、厚みがあることを強調した商品化を行うと良い。
初めのうちは、添付の小袋のたれなど、トンテキソースや塩レモンソースなどを使用して厚切りのおいしさをアピールすると良い。 また、今年は「ギルティ」のような、「がっつり」したバターソースやチーズなども流行の兆しがあるため、トレンド情報も敏感に取り入れて提案するようにしたい。
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