最近話題のフェイクミート(代替肉)。
スーパーにも売っているし、ちょっと気になってはいるものの「味はおいしいの?」「実際どうやって食べればいいの?」と様子をうかがっている読者も多いのでは(かくいう筆者もその一人)。
それなら一度、肉のプロにジャッジしてみてもらおうや! ということで、肉を知り尽くした肉のプロに、身近なフェイクミートの試食を依頼。
今回選んだのは、”地球を終わらせない。”という理念を掲げ、最近では大手スーパーなどでも手に入るようになった、話題のフェイクミート「ネクストミーツ」の3商品。
▲商品写真はとにかく肉々しくておいしそう。はたして実際のお味はいかに!?
ジャッジしてくれるのは、肉のプロ・米山健一郎さん
料理人として飲食業界でのキャリアをスタートし、某有名焼肉店の仕入れ・商品開発を担当する中で肉に魅せられた米山健一郎さん。
肉を愛し、高級肉からリーズナブルな肉まで、あらゆる部位を食べ尽くしてきたという猛者。
2015年には株式会社favyを立ち上げ、ITの技術を生かした新しい飲食店をプロデュース。肉マニアが集う完全会員制の”焼かない焼肉屋”「29ON(ニクオン)」や、独立を目指す複数名のシェフが一つのシェアキッチンで腕をふるう“シェフのためのコワーキングスペース”「re:Dine GINZA(リダイン銀座)」など、革新的な試みを展開中です。
──米山さんは某焼肉チェーン店で肉スキルを磨かれたんですね。
米山さん:仕入れ担当として産地に行って目利きをしたり、工場でカットの仕方を研究したり。大きいチェーンだったので、大量の肉を仕入れて流通させる仕入れの醍醐味を味わいました。
──現在手掛けていらっしゃる「29ON」の”焼かない焼肉屋”って、どういう意味なんですか?
米山さん:「29ON」は低温調理器を使った肉料理の専門店なんです。”焼かない焼肉屋”というキャッチフレーズは「焼肉」という検索ボリュームの大きいワードを活用しました。
低温調理器はここ5年くらいで日本でも広まり購入しやすくようになりましたが、当時はどこにも売ってなくアメリカから輸入してきたんです。
──そうだったんですか! 低温調理した肉ってそんなにおいしいんですか?
米山さん:抜群においしいです。タンパク質が硬くならず、かつ殺菌ができるギリギリの温度で調理することができるので、安い肉でも柔らかく仕上がります。
また、しゃぶしゃぶとか焼肉だとおいしい脂が溶け落ちてしまうんですが、低温調理で火入れすると脂を100%逃さず食べられる。
部位によっては調理時間が微妙に違うだけで仕上がりが変わるので、かなり研究しましたね。
──めちゃ気になります。やっぱり銘柄牛がおいしいんでしょうか?
米山さん:いえいえ、牛肉って全部おいしいんですよ。「29ON」では神戸牛などメジャーな肉も使いますが、お客様も肉好きで舌が肥えているので、最近はストーリーのある珍しいものも仕入れます。
今度、大分県の山の中で14年放牧したというマニアックな牛が入ってきますよ。好奇心をそそられる肉をいつも探しています。
──米山さん的に、良い肉の条件って何ですか?
米山さん:「食感」と「ジューシーさ」ですね。肉汁があふれる肉は噛む楽しみがありますよね。
──ちなみにフェイクミートを召し上がったことはありますか?
米山さん:実は、開発中のものなども含めて結構試食させていただいていて。ひと昔前と比べると、全体的にかなりおいしくなっていると思います。「ネクストミーツ」は初めて食べるので、楽しみです!
ネクストミーツとは
「地球を終わらせない。」を理念として掲げ、代替肉の研究開発を行う社会問題解決型フードテックベンチャー。肉の生産による温室効果ガスの排出量を抑えるべく、「おいしい植物性の肉」を普及させ、新しいライフスタイルを提案。焼肉やハンバーガー用パティ、チキンなど、さまざまな商品をリリースし続けている。
いよいよ実食! 肉のプロが感じた「ネクストミーツ」のお味はいかに
米山さんのお肉愛をうかがったところで、いよいよ実食のお時間。
今回は「ネクストミーツ」の主力商品である「NEXTカルビ1.1」「NEXTハラミ1.1」、そして「NEXT牛丼1.2」を食べていただきます!
▲米山さん自ら調理スタート
▲調理は簡単。カルビとハラミは、冷凍を20〜30分ほど自然解凍させたあと、フライパンや網で焦げ目が軽くつくまで焼く。牛丼は、冷凍のまま湯煎で5分ほど温めればOK。よりおいしく食べたい場合は、自然解凍させてから鍋で直接煮ると良いそう
【実食①:NEXTカルビ1.1】
▲写真左が「NEXTカルビ1.1」、右が「NEXTハラミ1.1」。塩とタレは米山さんが用意してくれた
──ではまずはカルビから、いってみてください。
米山さん:ではまずは、塩をつけて(パクッ)。
米山さん:うん、肉の食感はちゃんとありますね。本物の肉に比べるとジューシー感が物足りないのと、若干のボソボソ感は否めませんが。
──やっぱりジューシー感がポイントですね。
米山さん:そうですね。ただタレをつけるとジューシー感が出て、一気に牛肉っぽさを感じられておいしいです。
あとは味付けがしっかりしているぶん、肉の脂の感じが物足りないかもしれないです。とはいえ、低脂肪・高タンパクがこの商品の売りの一つでもあるということなので、脂をつけたらヘルシーさがなくなっちゃいますかね。
【実食②:NEXTハラミ1.1】
米山さん:うん、これも肉らしい食感があっておいしい。でも正直、カルビとの違いがわかりにくいですね(笑)。
──確かに、本物のハラミの食感は結構プリプリしていて特徴がありますもんね。
米山さん:これもタレをつけて食べると格段にうまくなります。塩味を足すというよりは、味の深みやジューシー感を補うためにタレがいい仕事をしますね。
もう一つ、このハラミは肉厚にしたりカットの方法を工夫したら、カルビとの違いも出せてより本物の食感に近づくような気がします。
あ、いいものがありますよ。これも試してみましょう。
──お、それは何ですか?
米山さん:うちで開発したポルチーニ茸のオイルです。
米山さん:(オイルに肉をつけてパクリ)うん! こういうフレーバー付きのオイルをつけて食べるとよりおいしくなりますね。
肉のおいしさって脂にあったりしますから、オイルでそれを補うイメージ。塩ごま油とかで食べるのも良さそうです。
【実食③:NEXT牛丼1.2】
──最後は牛丼でございます。
米山さん:(もぐもぐ)……味が薄いかもしれないですね。玉ねぎも入っているし、こちらで用意した紅生姜をトッピングしたら見た目は完璧なんですが、味には牛丼らしさがあまり感じられないです。肉らしさが足りないというよりは、味付けに原因があるのかもしれない。
──見た目は完璧ですけどね!
米山さん:牛皿として食べるならこのままでもいいですね。でも、ご飯にのせるならもう少しコクのある味付けのほうが合うかなと思います。
ただこちらも、コレステロールがほぼゼロで、身体に優しいことがアピールポイントだそうなので、"夜中に食べても罪悪感のない牛丼”として食べるのはすごくいいですね。
「ネクストミーツ」総評。ずばりおいしい? おいしくない?
──3品食べていただきましたが、率直にいかがでしたか?
米山さん:いままで食べてきたフェイクミートと比べると、味わいやジューシー感の面ですごく進化を感じました。従来のフェイクミートは水分を含んでいるような食感がなく、パサパサ感が気になっていたので。
ただもったいないなと思ったのが、食感が3品とも似ていること。今回みたいに続けて口にすると食べ飽きる感覚があったので、商品ごとに食感の差をつけるともっと面白いかなと思いました。
──米山さんのコメントを聞いていて、”脂感”が一つおいしさのポイントだなと思いました。
米山さん:肉の脂はうま味やジューシー感につながるので、本物の肉らしさを求めるなら油分を足したりすることは必要かなと。ただ「食べても身体に負担がないヘルシーな肉」という方向を目指しているとすると、このバランスでいいのかもしれません。
──アレンジするともっと楽しめそうですよね。
米山さん:そうですね。ビビンバっぽく仕上げたりしたら良いかもしれないです。あとこの食感を出せるならタンに似せた商品をつくって、塩とごま油で食べたらおいしそうだなと思いました。
──今日食べてみて、フェイクミートの可能性は感じましたか?
米山さん:感じましたね。カットの仕方でも口当たりが変わったりしますし、まだまだおいしくなる余地があると思います。
──これから、肉の未来はどうなると思いますか?
米山さん:完全に動物性の肉を食べなくなることは難しいですよね。僕もよく畜産業の方とお話をするのですが、やっぱりみんな罪悪感を持っている。
とはいえ、生きるための仕事をやめるわけにもいかないし、温室効果ガスの排出量を抑えるためにできることをしていかないといけないと、みなさん思っていらっしゃいます。
飲食業界としてはその一つの答えがフェイクミートだから、シフトできる部分はシフトして、肉とフェイクミートが共存しながら進んでいく世の中になるんじゃないかなと思います。
──では最後に、「ネクストミーツ」はおいしいかどうか、YES/NOでお願いします!
米山さん:二択なら……YES! 本物の肉と似ているかというと違う部分もありますが、味はおいしいです。というか、”フェイクミート(代替肉)”という名前をつけて動物性の肉に近づけなくても、なにか別の”未来食材”みたいなジャンルを築いてもいいのかなと思います。
判定:「ネクストミーツ」は食材としておいしい
というわけで肉のプロ・米山さんのジャッジは、総合的に見ると「おいしい」という結果に。
「ネクストミーツ」をはじめ、本物の肉とまったく同じとはならないまでも、肉のような味わいと食感を表現しつつ、なおかつ地球環境や身体に優しい食材であるフェイクミート。これは米山さんが言うように、まったく新しいジャンルの”未来食材”なのかもしれません。みなさんも試しに召し上がってみてはいかがでしょうか。
撮影:山﨑悠次
書いた人:井上麻子
真綿のように軽いフットワークが自慢。カナダワーホリで日本酒にハマり、現在はフードライターと日本酒商社の二足のわらじで歩行中。ときどき都内某所でポップアップバー「SAKEナイト」を開催中。
で、結局「フェイクミート」っておいしいの? 業界歴30年、全国の肉の仕入を経験した男に忖度抜きで食べてもらった - メシ通
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