へこたれないというより、鈍い。でもだからこそ――。ドキュメンタリー映画監督・森達也氏が思い描く、ジャーナリストの真価とは。
森氏は現代のジャーナリズムの問題点について、「みんなが会社員として周囲と歩調を合わせていることでは」と指摘する(左写真:記者撮影)
朝日新聞社は4月6日、他社媒体の編集権に”介入”したとして、峯村健司記者に懲戒処分を下した。他方、日本経済新聞に関しては若手記者の退職が相次いでいるという厳しい内情が報道されるなど、目下、新聞業界が何かと騒がしい。
個々の事件にはそれぞれの経緯や原因があるものの、底流には新聞社という組織ジャーナリズムの担い手の構造問題も存在していそうだ。新聞社は今、どんな課題を抱えているのか。部数減が止まらない中、どうすれば報道機関として復権できるのか。
業界内外の論客に聞くインタビューシリーズの第2回は、ドキュメンタリー映画監督で作家の森達也氏。「自分はジャーナリストではない」と話すが、オウム真理教信者たちの生活シーンを撮った『A』など、マスコミの手が届かない領域を1人で撮りきってきた。
2019年には、菅義偉官房長官(当時)の官邸記者会見で“空気を読まずに”質問し続けた東京新聞の望月衣塑子記者を追った『i-新聞記者ドキュメント-』を公開。現代のジャーナリズムの問題点について、「みんなが会社員として周囲と歩調を合わせていることでは」と指摘する。
峯村氏は「後ろめたさがなさすぎる」
――朝日新聞の編集委員だった峯村健司氏が、安倍晋三元首相の依頼で他社に発売前の誌面(ゲラ)を見せるよう要請していました。
ジャーナリストの仕事をマニュアルで定義するのは難しいと思っている。監視すべき権力者の懐にあえて入り込む場合もあるかもしれないし、時には違法すれすれの領域に踏み込むことだって否定はしない。
ただ、峯村氏の言動には強い違和感がある。
峯村氏はブログで、「致命的な誤報を阻止しようと行動」したと主張している。国益を損ねることを防いだのだと解釈できる記述もある。「重大な誤報を回避する使命感をもって」などと峯村氏は書いているけれど、何が正しくて何が間違っているのか、自分はそれを知っていると、なぜ断言できるのか。後ろめたさがなさすぎる。
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読み頂けます。
登録は簡単3ステップ
東洋経済のオリジナル記事1,000本以上が読み放題
おすすめ情報をメルマガでお届け
報道記者は「空気を読めない」ことこそ武器になる | 特集 - 東洋経済オンライン
Read More
No comments:
Post a Comment