制度を形式的に取り入れるだけでは、男性の育児休業を大きく伸ばすことはできない。大切なのは組織トップが旗を振り、「取って当たり前」の空気を醸成していくことだ。
改正育児・介護休業法が今月、施行された。
企業に対し育休取得の働きかけを義務付けるなど、父親の育児参加促進に力点を置いた改正である。
まず企業は育休制度を事前に社内に周知し、子どもが生まれる社員には取得の意向を確認しなければならない。
男性社員の6割以上が会社から働きかけがなかったと回答している調査結果がある。努力義務からの引き上げで、企業の責任はより重くなった。
10月からは、男性版産休と呼ばれる「産後パパ育休」もスタートする。
妻の産休期間に合わせ、出生後8週間以内に4週間の休みを2回までに分けて取得できる措置だ。期間中は雇用保険から通常の育休と同じ給料の3分の2が支払われる。
慣れない子育ての負担は大きく、出産後の女性は産後うつ発症リスクが高いとされる。こうした妻を集中的にサポートしたいと考える夫は多い。
さらに現在は子どもが1歳になるまで夫婦で1回ずつとなっている通常の育休を、それぞれ2回まで分けられるようにする。
妻の職場復帰のタイミングで夫が育休を再取得するなどの使い方が想定される。働き方の柔軟性がどれくらい高まるのか注視したい。
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育休の取得率は男女で大きな差がある。
2020年度雇用均等基本調査によると、女性81・6%に対し男性12・65%。政府が目標としていた「20年までに13%」は達成できなかった。
なぜ男性は伸び悩んでいるのか。
各種調査で浮かび上がるのは「職場に根強く残る育休を取りづらい雰囲気」である。取得したものの同僚へ負い目を感じたり、取得しようとして嫌がらせを受けたという人も少なくない。
だからこそ取得しやすい環境の整備は急務である。
若い世代ほど仕事も家事も育児も男女平等という考え方が強まっている。
共働き世帯が増える中、子育てのしやすさは、学生が就職先を選ぶ要素の一つにもなっている。
改正法により来春からは、大企業に対し育休取得状況の公表も義務付けられた。
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おきなわフィナンシャルグループは、今月1日から子会社の沖縄銀行の男性行員に1カ月の育児休業取得を義務化した。「男性が本気で育児に取り組むことで、仕事では得ることのできない新しい知識、経験の獲得を後押しする」という。
自治体や企業トップが自ら取得したり、取得を促すことで空気が変わり、実績が上がった例が多い。
誰が取っても支障なく業務が遂行できるような体制も含め、組織として仕事と子育ての両立を応援していく姿勢が重要だ。
社説[男性の育児休業]当たり前の空気醸成を - 沖縄タイムス
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