赤身主体の「都萬牛」を手掛ける矢野拓也さんは味に自信を持つ=西都市
西都市にあるミート工房拓味(たくみ)だ。約70頭を飼い、自社ブランド「都萬牛(とまんぎゅう)」として売り出す。一般的な流通ルートには乗せず、直売所とネットのみで販売する。地元の都萬(つま)神社に名前は由来するという。
直売所に入ると、サシの量が控えめな赤身中心の肉がずらりと並ぶ。100グラムの価格はサーロインステーキ肉1300円、すき焼き用のロース肉900円。直売所限定の特価というが、なかなか値が張る。
矢野拓也代表(38)は「格付けで評価すればA2~3等級程度の肉だけど、値段はA5くらい」と言い、「味が良ければ売れる」と自信を示す。
肉は自らの舌で確かめて売るようにしている。営業活動を一切しないにもかかわらず、口コミで取引先が全国の飲食店に広がっていることが、強気の発言を支える。
■味そっちのけ
矢野さんは9年前、靴の輸入業から、畜産の世界に足を踏み入れた。
サシの多い霜降り肉は脂っぽくて箸が進まなかった。量を食べられない肉は本当においしいと言えるのか-。これが出発点だ。
牛肉はA5を頂点にした格付け等級を目安に取引される。見た目のサシの量が価格を左右する規格に対し、「味がそっちのけになっている。もうけるためにサシを入れるのは間違いだ」と語気を強める。
牛の健康を考慮して、都萬牛は餌にこだわる。牧草や稲わらを多めに与える一方、肥育に欠かせない高カロリーな穀物は少なめ。茶葉や焼酎かすを交ぜ、ビタミンやミネラルをたっぷり取らせる。
格付けと距離を置いた経営で和牛業界と一線を引きながらも、輸入飼料などの高騰によるコスト増を補えるA5等級に生産が偏る現状を憂う。「格付けに振り回されないシステムの改革が必要。求められていない肉を作るのはやめるべきだ」
■挑戦
「サシ一辺倒」の是正は鹿児島でも動き出した。5等級の肉作りを農家とともに進める県経済連が24日、「実験農場で4等級の可能性にトライしていく」と表明した。
量販店を中心に引き合いがありながら、品薄になっている4等級の生産を増やすのが狙いだ。
肥育期間を通常より5カ月ほど短縮することでサシを抑える。コスト増にあえぐ肥育農家にとっても好都合と言える。肉用牛課の大里和弘課長(49)は「消費者の多様なニーズに応えることが、食料を供給する私たちの役割だ」と語り、あくまでも実証試験であることを強調する。
とはいえ、日本一の和牛産地をけん引する県経済連の挑戦はインパクトが大きい。「A5神話」の終わりの始まりとなるのか。取り組みが注目される。
(連載【翔べ和牛 第3部 A5神話】より)
和牛の格付けに異議あり 霜降り肉は脂っぽくて箸が進まない 畜産の異端児は断言「もうけるためにサシを入れるのは間違い」 | 鹿児島のニュース - 南日本新聞
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