この公演は,1991年発売のゲームボーイ用ソフト「聖剣伝説 〜ファイナルファンタジー外伝〜」(以下,「聖剣伝説 FF外伝」)から始まる,「聖剣伝説」シリーズの30周年を記念したオーケストラコンサートだ。ここでは,同公演の模様をレポートしていこう。
ステージでは,「聖剣伝説 FF外伝」「聖剣伝説2」「聖剣伝説3」「聖剣伝説 Legend of Mana」(以下,「聖剣伝説 LoM」),「聖剣伝説4」の5タイトルから名曲・人気曲全21曲がオーケストラアレンジされ,大井剛史氏の指揮,東京交響楽団による演奏で披露された。
「聖剣伝説」30th Anniversary Orchestra Concert
(Music 4Gamer #7) 昼公演
■第一部
1.「Rising Sun」(「聖剣伝説 FF外伝」より)
2.「Angel's Fear」〜「天使の怖れ」(「聖剣伝説2」「聖剣伝説3」より)
3.「プロローグ 〜マナと大地と精霊と〜」(「聖剣伝説4」より)
4.「Legend of Mana 〜Title Theme〜」(「聖剣伝説 LoM」より)■第二部
5.「Meridian Child」(「聖剣伝説3」より)
6.「Where Angel Fear to Tread」(「聖剣伝説3」より)
7.「Swivel」(「聖剣伝説3」より)
8.「Delicate Affection」(「聖剣伝説3」より)
9.「Decision Bell」(「聖剣伝説3」より)
10.「Electric Talk」〜「少年は荒野をめざす」(「聖剣伝説3」「聖剣伝説2」より)
11.「Hightension Wire」(「聖剣伝説3」より)■第三部
12.「聖剣を求めて」(「聖剣伝説 FF外伝」より)
13.「ホームタウンドミナ」(「聖剣伝説 LoM」より)
14.「哀しみのなかで」〜「想いは調べにのせて」(「聖剣伝説 FF外伝」より)
15.「忘れえぬ想い」(「聖剣伝説4」より)
16.「Pain the Universe」(「聖剣伝説 LoM」より)
17.「愛に時間を」〜「そのひとつは希望」(「聖剣伝説2」より)
18.「愚者の舞」〜「最後の決戦」(「聖剣伝説4」「聖剣伝説 FF外伝」より)■アンコール
19.「懐かしき歌」(「聖剣伝説 LoM」より)
20.「子午線の祀り」(「聖剣伝説2」より)
21.「伝説よ永遠に」(「聖剣伝説 FF外伝」より)
「聖剣伝説」30th Anniversary Orchestra Concert
(Music 4Gamer #7) 夜公演
■第一部
1.「Rising Sun」(「聖剣伝説 FF外伝」より)
2.「Angel's Fear」〜「天使の怖れ」(「聖剣伝説2」「聖剣伝説3」より)
3.「プロローグ 〜マナと大地と精霊と〜」(「聖剣伝説4」より)
4.「Meridian Child」(「聖剣伝説3」より)■第二部
5.「Legend of Mana 〜Title Theme〜」(「聖剣伝説 Legend of Mana」より)
6.「懐かしき歌」(「聖剣伝説 Legend of Mana」より)
7.「ホームタウンドミナ」(「聖剣伝説 Legend of Mana」より)
8.「彩りの大地」(「聖剣伝説 Legend of Mana」より)
9.「海へ」(「聖剣伝説 Legend of Mana」より)
10.「滅びし煌めきの都市」(「聖剣伝説 Legend of Mana」より)
11.「Pain the Universe」(「聖剣伝説 Legend of Mana」より)■第三部
12.「聖剣を求めて」(「聖剣伝説 FF外伝」より)
13.「Electric Talk」〜「少年は荒野をめざす」(「聖剣伝説3」「聖剣伝説2」より)
14.「哀しみのなかで」〜「想いは調べにのせて」(「聖剣伝説 FF外伝」より)
15.「忘れえぬ想い」(「聖剣伝説4」より)
16.「Hightension Wire」(「聖剣伝説3」より)
17.「愛に時間を」〜「そのひとつは希望」(「聖剣伝説2」より)
18.「愚者の舞」〜「最後の決戦」(「聖剣伝説4」「聖剣伝説 FF外伝」より)■アンコール
19.「懐かしき歌」(「聖剣伝説 LoM」より)
20.「子午線の祀り」(「聖剣伝説2」より)
21.「伝説よ永遠に」(「聖剣伝説 FF外伝」より)
公演の冒頭では,演奏に先駆けて「聖剣伝説」の生みの親であるゲームクリエイターの石井浩一氏と,「聖剣伝説2」「聖剣伝説3」を手がけた田中弘道氏,そして現在「聖剣伝説」シリーズ プロデューサーを務める小山田 将氏が登壇。小山田氏が聞き手となって,石井氏と田中氏が「聖剣伝説」シリーズのこれまでについて語った。
まず,「聖剣伝説」シリーズが30年続いたことについて石井氏は,オリジナル版をプレイしてファンになってくれた人もいれば,リマスター版やリメイク版で新たにシリーズを知ってくれた人もいて嬉しいとコメント。田中氏は,自身が「聖剣伝説2」からシリーズに参加したことについて説明。もともとは「ファイナルファンタジーIV」として練られていた企画が,幻のスーパーファミコン用CD-ROM専用タイトルの企画に転用され,最終的に「聖剣伝説2」として日の目を見ることとなったという紆余曲折を,あらためて紹介した。
続いて「聖剣伝説」25周年以降,シリーズのリマスター版やリメイク版が続々登場したことについての話題に。石井氏は「聖剣伝説3」が3Dグラフィックスの「聖剣伝説3 TRIALS of MANA」(PC / PlayStation 4 / Nintendo Switch / iOS / Android)としてリメイクされたことに触れ,ここで初めて興味を持って遊んでくれた人がいるとコメント。一方,田中氏は,10年ほど前にリメイクの話が持ち上がったとき,それよりも新しいものを作るほうがいいと考え,リメイクに否定的な姿勢だったことを明かした。とはいえ,今では新たに遊んでもらえる機会ができたことを,ありがたく感じているとのこと。
そして最後に,「聖剣伝説」シリーズとしては3回めとなる今回のオーケストラコンサートへの思いが,それぞれ語られた。石井氏は当日のリハーサルを聴いて,開発中のつらかったことや,音楽と絵と遊びが結びつくことでゲームが面白くなることを思い出したという。さらに「生音はやっぱりいいな」とも思ったそうだ。田中氏は,過去2回とも「これ何の曲だっけ?」と思って聴いていたことを明かした。とくに「聖剣伝説2」「聖剣伝説3」の楽曲は,もともとオリジナル版が独特な曲調だっただけに,そのオーケストラアレンジはまるで新曲のように感じていたと話した。
続く第二部では,「聖剣伝説3」の楽曲をフィーチャー。演奏された7曲はいずれも屈指の人気曲だが,民族音楽調のリズミカルなフィールド曲をオーケストラで見事に再現していた。ここでは,2021年に無観客公演として配信された「『聖剣伝説3』25th Anniversary Orchestra Concert」(関連記事)終了後,多くのファンから寄せられた「『Swivel』も聴きたかった」という要望を受け,単曲として新規アレンジが実現。祝祭感を増したSwivelが披露されたことは特筆しておきたい。
なお,夜公演の第二部では,「聖剣伝説 LoM」の楽曲がフィーチャーされ,こちらもファンから熱く支持されている人気の7曲が演奏された。「ホームタウンドミナ」や「滅びし煌めきの都市」などは,イントロを聴いた瞬間にこらえきれずに涙を流す聴衆もちらほらと見られた。しかし,そうした雰囲気からの「Pain the Universe」では,ホール内が静かな熱狂に包まれていた。このように緩急の効いた構成が可能なのは,「聖剣伝説」シリーズが多彩な楽曲に恵まれていたからなのだろう。
休憩を挟んでスタートした第三部の冒頭では,「聖剣伝説 FF外伝」「聖剣伝説4」の作曲を手がけた伊藤賢治氏,「聖剣伝説2」「聖剣伝説3」の作曲を手がけた菊田裕樹氏,「聖剣伝説 LoM」の作曲を手がけた下村陽子氏が登壇。ここでも小山田氏が聞き手となって,シリーズの音楽にまつわるトークを披露した。
最初の話題は,ここまでの演奏について。伊藤氏は,生演奏の圧がすごいことと,久々の有観客公演で多くの人と感動を共有できる嬉しさについてコメント。菊田氏は「よくこんな曲書いたな」「皆すごい仕事をしてたんだな」とあらためて感じ,胸が熱くなったと語っていた。それを受けた下村氏は,開口一番「菊田さんは鬼だなと思った」と一言。すなわち,当時は自分達の書いた楽曲をオーケストラで演奏するとは夢にも思わなかったので,とくに菊田氏は生演奏では難しい実験的・挑戦的な手法を自身の楽曲に多く盛り込んでいたと言うわけである。また下村氏は,演奏を聴くと作曲していた当時にトリップしてしまうとも話していた。
また,「聖剣伝説」シリーズの好きな楽曲の中で,自分以外の人が書いたものについての話題になると,伊藤氏は「(お気に入りは)いっぱいある」としながら,とくに菊田氏の「天使の怖れ」と下村氏の「滅びし煌めきの都市」については“殿堂入り”だと語った。それ以外でも,菊田氏の「Meridian Child」,下村氏の「ホームタウン ドミナ」を気に入っているそうだ。
菊田氏は「聖剣伝説 FF外伝」の楽曲を挙げ,旧スクウェアに入社した当時,同タイトルのオーケストラアレンジ版サウンドトラックの収録にずっと立ち会っていたことを思い出すと語った。そして下村氏は,自身の書いた楽曲で一番好きなものを問われると「選べない」と答えているそうだが,他人の楽曲もやはり選べないとコメント。それでも強いて選ぶなら「いつでもメロディを口ずさめる」ということで,伊藤氏の「Rising Sun」と菊田氏の「少年は荒野をめざす」を挙げた。
その後,コンサート後半の注目ポイントについての話題に。伊藤氏は,指揮者の大井氏が,楽曲やアレンジされた譜面の奥にある意図まですくい取って,ときに踊るように,ときにキビキビと全身を使って指揮する姿を,演奏とともに楽しんでほしいと語った。また菊田氏も大井氏について言及し,難しいはずの自身の楽曲を見事に演奏してもらえて感謝しているとした。
下村氏も同様に大井氏の指揮に触れつつ,同じ空間,同じ時間軸の中で,演奏が空気を震わせて音楽ができていることを,会場にいる方々に体感してほしいと語っていた。
第三部本編は,シリーズ各タイトルの人気曲が演奏された。「聖剣伝説 FF外伝」のストーリー後半で流れるフィールド曲「聖剣を求めて」の,力強さを感じさせつつ,どこか軽やかさのあるアレンジの演奏に導かれるように,シリーズ各タイトルの名シーンや息詰まるボスバトル,そして物語のクライマックスを次々に思い起こさせる流れで楽曲が演奏されていった。
第三部の最後に大迫力で演奏された「愚者の舞」〜「最後の決戦」のあと,鳴り止まない拍手の中で始まったアンコールは「聖剣伝説 LoM」の「懐かしき歌」,「聖剣伝説2」の「子午線の祀り」,そして「聖剣伝説 FF外伝」のエンディングで流れる「伝説よ永遠に」の3曲だ。あたかも隠しイベント発生,裏ボスとの壮絶なバトルの末にたどり着いた真エンディングのような展開に,会場は再び大きな拍手に包まれ,コンサートは幕を閉じた。
「『聖剣伝説』30th Anniversary Orchestra Concert」レポート。ホール内の空気を震わせる生の音楽が,聴衆を魅了した - 4Gamer.net
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