ノルウェーでは食がどんどん政治的になっている。
9月13日の国政選挙に向けて、話題のひとつが「私たちはこれから何を食べていくか」だ。
気候危機の影響で、排出量の増加につながる肉や牛乳は、かつてないほど問題視されている。
「もっと野菜を食べて、食べる肉の量を減らすべきだ。特に赤肉を」という声は増す。一方で、農家からの反対の声や、「何を食べるかを政治家が決めるな」というライフスタイルの変化についていけないという人もいる。
ノルウェーでは「あの政党の典型的な食事といえば」というイメージが定着している
子どもや若者は環境・気候の政治分野に関心が高い層だ。
ノルウェーでは、「あの政党の支持者は、こういうものを食べるよね」という各政党に対する一般的なイメージというものが浸透している。
例えば「緑の環境党」なら野菜、「中央党」なら国産、「進歩党」なら肉という具合に。
そこでオスロにある「子どものためのイェイトミラ食文化センター」は、国政選挙前に、政治家と小学生に食で交流してもらう企画を立ち上げた。
政治家に「政党ごはん」を作ってもらおう!
イベント内容はこうだ
- 政党の政策を反映する食材でバーベキュー
- 食材を買い物して、料理するのは政党の青年部(予算に制限なし)
- 小学生は食材を焼いている国会議員・今年の選挙の立候補者に次々と質問をする
料理中の政治家を質問攻めにしちゃおう!!
企画の目的は「子どもが政治家をグリルする」こと。ノルウェー語では「質問攻めにする」と「バーベキューをする」を両方とも「グリルする」という。普段は政治家をグリルするの報道陣の仕事だが、今回は子どもたちが容赦なく質問を浴びせるというわけだ。
この日は25度という異例の暑さで、政治家たちはまさにギラギラとした日照りの下、バーべーキューの火の熱風に加え、子どもたちからも質問攻めに「グリルされる」ことになる。
- 「海の上の風力発電についてどう思っているの?」
- 「もしノルウェーが石油産業をやめたら、代わりのお金はどこから持ってくるの?」
- 「電気自動車EVは走っている間は環境にいいかもしれないけれど、製造過程でたくさんの排出量を出すよね?」
- 「あなたたちの政党は、いつ石油をやめるべきだと思っているの」
- 「残り物を捨てすぎていることを、どう思う?」
- 「ソーセージだって、作るのにたくさんのエネルギーを使うよね?」
- 「ソーセージを食べることができない宗教の人だっているよ?」
- 「羊肉が売り切れずに、たくさん余ったままでいることをどう思う?」
- 「未来はどうなっていると思う?」
- 「お金よりも環境を大事にしたほうが、私たちは幸せに暮らせるよね?」
政治家との会話で考える力を育てる小学生
ショールさん(11)「僕は未来はどうなっていくかという考えが、進歩党と同じ意見。しっかり答えてくれたし、わかりやすく説明してくれた。ノルウェーではもっと野菜を食べて、肉を減らしたほうがいいんじゃないかな」
ナディラさん「食品ロスのことをたくさん聞いたの。うまく質問できたと思う」
ナスラさん「家ではたくさんの野菜を食べています。ノルウェーではもっと野菜を多く食べて、肉を減らすといいと思う。とくに鳥肉。そのほうがサステナブル。緑の環境党と、左派社会党が私はいいなと思った」
ソフィエさん「質問はうまくできた!労働党は、たまにちゃんと質問にしっかりと答えてくれなかったな。私はいつもは政治の話はあまりしない。肉はもっと減らすべきだと思う。ノルウェー人は昔はもっと野菜を食べていたのにね。緑の環境党と私は考えが近いかな」
「政党の食材」を仕入れてきたのは高校生・大学生の党員たち
食材を焼きながら、小学生の質問に答えていたのは国会議員や今年の選挙の立候補者。その後ろで食材を黙々と切っていたのは、各政党の青年部だ。ほとんどが中学生~大学生だった。
「初めて投票する」若い世代が選ぶ、未来の食卓に並ぶものとは
労働党の青年部から参加していた2人は今年が初めての投票で、投票を楽しみにしていた。
高校生のアステルさん(18)「いつもの選挙運動とは違うけれど、とてもいい企画だと思います。労働党は、地産地消の肉をもっと選びやすい政策を目指しています」
ヨナスさん(17)「食が政治的になるのは大事なことで、市民が環境に優しい食材を安い価格で購入できるようにしたいのが労働党。別の政党が焼いている赤肉よりも、安い価格でね!」
「大人よりも子どものほうが、聞き上手」
進歩党のヨン・ヘルグヘイム国会議員「子どもと話すのはおもしろい体験です。太陽とバーベキューの火と子どもからの質問を一度に浴びるのは大変でしたけど」
「大人は自分の意見を決めてから質問しにくる人が多いんです。子どもはどちらかというと、自由に話すことができるオープンな質問をして、もっと私たちの話に耳を傾けてくれますね」
「進歩党は党の考え方を反映する食材を選びました。つまり、市民に強制しない。市民は自分で選ぶことができる。だから、魚、野菜、ソーセージから幅広いメニューとなります。ソーセージを選んだのは私たちの党だけじゃないですかね。簡単で安くて子供も大人も好きなもので、ノルウェーの伝統でもあります」
「肉をゼロにというわけではない」
緑の環境党の青年部のアイリックさん
「今の季節に採れる、この食施設で耕している野菜を選びました。肉はたくさんのガスを出します。気候のためには必要な対策です。もちろん党の方針を難しいという人たちもいます。それでも党としては明確な指針を出しておく必要がある」
「食肉業界を全廃し、肉をなくそうとしているわけではありません。国外から輸入するくらいなら国産のほうがいい。農家が肉を大量生産しなくていいように、商品価格を高くすれば、農家はより少ない生産量で生活していくことができます。今の方向性を変えることは可能です」
肉?野菜?魚?「政党ごはん」をノルウェー政治家が小学生に調理した(鐙麻樹) - 個人 - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース
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