みんな「きれいな空気」を求めてる。
コロナの影響で「空気の質」がより注目されるようになりましたよね。かつては主に花粉シーズンに売れる「季節家電」だった空気清浄機も、2020年は年間を通して売れ続け、一時は品切れになる製品も出てくるほど需要が高まりました。
そんな中「空気のプロ集団」とも言えるダイキンが2021年4月に発売した「UVストリーマ空気清浄機 ACB50X」はひときわ注目したいモデルです。
一番の特徴は、業界初(※1)の深紫外線=UVCを照射するLEDを搭載したこと。抗菌HEPAフィルターに、UVC LEDで90分ごとに約30分の深紫外線照射を行なって除菌。プラズマの放電によって有害物質を酸化分解するダイキン独自(※2)のストリーマ技術と組み合わせることで、ウイルスを抑制します。
この3つの技術の組み合わせは威力抜群で、フィルターに捕らえたウイルスを30分で99%以上抑制(※3)、菌は従来製品と比較して約10倍の速度で除菌(※4)というパワフルさ。
まさにいま欲しい空気清浄機という感じですが、タイムリーな登場の裏には異例とも言えるスピードでの開発が行われていたようです。その舞台裏についてダイキンの方にインタビューしました。
インタビューに答えてくださったのは、開発を担当された清野竜二さんと……
商品企画を担当された長内美鶴さんのお二人です。清野さんのいる滋賀と長内さんのいる東京をリモートでつないで取材を行いました。
今回は生産ラインも一から作りました
── ACB50Xの開発がスタートしたのはいつごろだったのですか?
清野さん:2020年の11月です。発売が4月26日でしたから、5カ月程度で製品化まで漕ぎ着けたことになります。
── 5カ月とは、本職でない私でも「なんだか早そうだな」という気がします。通常はどのくらい時間をかけるものなのですか?
長内さん:通常の製品では企画から発売まで、1年くらいのスパンが必要です。今回は過去のダイキンではあり得ないくらいのスピードで製品化まで至っています。
── その早さが実現できた要因は?
清野さん:UVCの基礎的な技術に関してずっと以前から研究していたことが大きかったです。実はコロナ以前の2018年の段階で、UVC LEDを用いた空気清浄機の製品化を計画したことがありました。そのときは実現には至らなかったのですが、研究所では「この技術は将来絶対に必要になる」という手応えがありました。その後もずっと研究を継続していたおかげで、弊社ではUVCに対してかなりの技術的な蓄積があったのです。
長内さん:UVC LEDには254nmや280nmなどさまざまな波長を発するものがあります。ACB50Xで使われている265nmは除菌にもっとも効果を発揮するとされる波長で、空気質の大幅な改善が期待できます。この波長を発生するLEDを開発された旭化成様と、プロジェクトを組んで綿密に連携しながら製品開発できたことも大きなポイントでした。
── 技術の蓄積があったとはいえ、実際に生産するとなると各所の調整も発生するのでなかなかスピードは上がらないですよね。
清野さん:その点は、国内生産にしたことが大きかったです。開発部隊のいる滋賀製作所に生産ラインを設置して、開発・設計から製造まで全部門が一堂に顔を合わせることで、コミュニケーションもしやすくなりました。トラブルが生じたときの対応にもタイムラグがなくなりますし、製品仕様の変更もスムーズにできました。
── 工場にラインを新たに作ったのですか!?
清野さん:そうなんです。新たな生産ラインを作ることからスタートし、一方では試作品の組み立てを進めて…という感じで、すべてが同時進行でした。現場は非常に大変でしたよ(笑)。
男性用スリッパが置けるスペースがあれば設置できます
── ACB50Xを触ってみたんですが、これとっても軽くて小さいですね。
長内さん:ありがとうございます。その点が気に入ったという声をお客さまからも多くいただいています。重さは6.8kg、高さは50cm。縦横は27cm四方なので男性用のスリッパが置けるスペースがあれば設置できます。
── コンパクトで置き場所を選ばないのはメリットですね。
長内さん:実際、会議室やシェアオフィスなど、区切られたオフィス空間での需要が高いです。あとは地域のクリニックなど、小規模な医療機関でも人気が高いです。医療関係の方々は医療機器の殺菌にもUVCを利用されていますし、その効果をよく理解されておられると思います。
── なるほど。しかし小型にするためには技術的なトライもあったのでは?
清野さん:そうですね。その点で苦労したのが、ストリーマやHEPAフィルターと、UVCをどう組み合わせてパーツを配置していくかということでした。特にUVC LEDの配置は難しかったです。
── ふむふむ、UVC LEDの配置ですか。
清野さん:電灯をイメージしていただければ分かると思いますが、光源を遠くに置けば置くほど光の当たる範囲は広がりますが、光量は少なくなりますよね。限られた距離でHEPAフィルターの全面にUVCを当てつつ、十分な光量を保つというバランスを得るのが難しいのです。今回はUVC LEDを開発した旭化成様と照射シミュレーションを100回以上行い、効果的な設置場所を見つけ出しました。
── 100回以上ですか! 5カ月なのに!
清野さん:また、安全性確保のためにUVCを機外に漏らさないというのも絶対に守らなければならないポイントです。UVC LEDから放たれる深紫外線は直接外部に向かわない設計になっていますが、紫外線を外に漏らさないようにすることと、それにより気流が邪魔されないことを両立させることも大変苦労しました。さらに、メンテナンス扉を引き出したときには、自動的に安全保護機構が働いてUVCの照射が停止されるようになっています。
── 安心して使えるのはユーザーにとってはうれしいポイントです。
清野さん:われわれとしては「本来価値のないはずの空気に価値を与える」ことを、製品開発において重視しているのです。例えばエアコンであれば「暖かい・涼しい」というのを感じられますが、空気清浄機は効果を感覚としてとらえることはなかなか難しいですよね。でも、実感してもらうことは難しいとしても、技術で人々に「安心感」を与えることはできるんじゃないかと考えているのです。
空気のプロ集団が作り上げた逸品
蓄積した技術を生かし、生産ラインを一から作って(!)異例のスピードで製品化しつつ「安心感」もしっかり担保されているACB50X。
お二人の話を聞いていて、ダイキンの皆さんは「空気のプロ集団」、違う言い方をすると「空気オタク」だなぁとしみじみ感じたわけですが、ACB50Xはプロの技術と知恵がギュッと詰まった逸品だと言えますね。
※1 一般社団法人 日本電機工業会規格に準拠した空気清浄機において、2021年3月1日発表。
※2 2021年2月現在、ストリーマ放電により酸化分解力を持つ分解素を生成する技術において。
※3 セーフティキャビネット内での試験の効果であり、実使用空間での実証結果ではありません。
試験機関:(一財)北里環境科学センター 試験番号:北環発2020_0614号 試験方法:空気清浄機に搭載した集塵フィルター
上流側(粗塵捕集部)にウイルス液を接種した試験片を貼付し、セーフティキャビネット内で運転。30分後のウイルス感染価を測定。
試験対象:1種類のウイルス 試験結果:30分で99%以上抑制 試験機:ACB50Xで実施(ターボ運転)
※4 25立方メートルの密閉した試験空間での効果であり、実使用空間での実証結果ではありません。
ACB50X:30分で99%以上抑制、MC55X:5時間で99%以上抑制との比較。
Photo: 小原啓樹、重村和宏
Source: ダイキン
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