家畜伝染病「CSF(豚熱=
「なんで出荷できないのという声をたくさんもらった。やっと出荷できると思うとうれしい」
野生鳥獣の肉「ジビエ」専門の食肉処理施設「大長谷ハンターズジビエ」(富山市八尾町中島)の石黒木太郎代表(29)はそう話す。16年に施設を開き、自らイノシシを捕獲。多い時は年間50頭ほどを出荷してきた。
しかし、CSFの感染が全国的に広がり、県内でも19年7月、感染したイノシシが初めて確認された。国は19年8月、確認地点から半径10キロ以内で捕獲されたイノシシについて、ジビエ利用の自粛を要請。県内でも、確認地点の増加とともに自粛エリアが広がり、流通が止まった。
一方で、国は検査方法の検証などを進め、捕獲されたイノシシがCSFに感染していないことなどが確認されれば、出荷を可能にする方針を今年4月にまとめた。これを受けて、県も具体的な手続きを定めた。
それによると、イノシシ肉を扱う業者は、県の検査機関にイノシシの血液を送って検査を受け、感染の有無を調べてもらう。陰性なら食肉として流通させることができる。検査を受ける前提として、結果が出るまでの間、ウイルスがつかないように肉を保管するための保冷庫を整備するなどの対策を行い、事前に県の承認を受ける必要がある。
県は今月15日に申請の受け付けを始めた。順次、出荷を認める方針だ。
石黒さんも、こうした方針に従い、既存の保冷庫を活用したり、レンタルしたりすることを検討している。石黒さんは「イノシシは主力商品。しっかりと準備をして品質のよいイノシシを届けたい」と話す。旬を迎える今秋からの出荷を目指すという。
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県内ではイノシシによる農作物被害が大きな問題となっており、対策の一つとして捕獲の強化に取り組んできた。ただ、捕獲されたイノシシの多くが、廃棄処分されていたことから、県は、中山間地の資源を有効活用しようと、イノシシなどの肉を、「とやまジビエ」と名付けて売り出してきた。
イノシシのジビエ利用も15年度は26頭に過ぎなかったが、19年度には、312頭にまで拡大。少しずつ知名度も向上していたが、出荷の自粛を受け、20年度には0頭になった。県農村振興課は「安心してとやまジビエを楽しめる環境を整備し、再び利用拡大につながれば」としている。
イノシシ肉を提供してきた飲食店も期待を寄せている。
砺波市太郎丸のイタリア料理店「オステリア アクア フレスカ」では、出荷が停止するまで、パスタなどの具材として県産のイノシシ肉を提供し、人気を集めてきた。同店オーナーシェフの小西富治さん(50)は「県産のイノシシは臭みがなく、好評だった。それだけに出荷の再開はうれしい。再びお客さんに味わってもらえるのが楽しみだ」と話している。
CSF(豚熱=豚コレラ) ウイルスにより起こる豚、イノシシの伝染病。強い伝染力と高い致死率が特徴で発熱や食欲不振がみられる。人にうつることはなく、仮にCSFに感染した豚などの肉や内臓を食べても、人体に影響はない。
イノシシ肉やっと口に 県、出荷承認方針 検査、保冷庫整備など条件 - 読売新聞
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