こんにちは、料理・食文化研究家の庭乃桃です。今回ご紹介するのは、ふんわり柔らかな鶏むね肉と、一年を通じて手に入りやすい白菜を使った中華風のこっくりうま煮。つるつるの春雨や干し椎茸も入った、そのまま食べてもご飯にかけてもおいしい、食欲をそそる一品です。
うま味の鍵を握るのは、オイスターソース、鶏肉、そして干し椎茸。うま味の三大成分である、オイスターソースに含まれるグルタミン酸と、鶏肉に含まれるイノシン酸や干し椎茸に含まれるグアニル酸を組み合わせることで、うま味の相乗効果が生まれ、よりおいしく感じられるのです。この組み合わせをマスターすることで、家庭でも中華風の本格的な味わいを再現することができ、料理の選択肢がぐんと広がるかもしれません!
干し椎茸のうま味を十分に引き出す戻し方や、パサつきやすい鶏むね肉をふんわり柔らかくジューシーに仕上げるコツ、白菜の甘みとうま味をしっかりと引き出す方法なども必見です!
鶏むね肉と白菜と干し椎茸の中華風うま煮
【材料(2人分)】
- 鶏むね肉……1枚(250g)
- 白菜……4枚(250g)
- 干し椎茸……3枚(乾燥状態で5g)
- 春雨(乾燥)……35g
- ごま油……小さじ1と1/2
- 片栗粉……大さじ2
- 干し椎茸の戻し汁+水……合わせて600ml
- 糸唐辛子……適宜
【鶏むね肉の下味】
【合わせ調味料】
- オイスターソース……大さじ1と1/2
- 鶏ガラスープの素(顆粒)……大さじ1
- 紹興酒(または 酒)……大さじ1
- 醤油……大さじ1/2
- 砂糖……小さじ1
- ブラックペッパー……少々
※紹興酒を使うと本格的な味になりますが、なければ酒でOK。
作り方① 干し椎茸を戻す
まずは、今回の味のベースとなる干し椎茸を戻していきます。戻し方はいくつかありますが、手軽かつしっかりとうま味が出るのは、一晩水に浸けておく方法です。
やり方は、とても簡単。
干し椎茸の汚れをさっと水で流したら、椎茸の頭が少し出るくらいのひたひたの水(分量外)に浸けます。
このとき、一番硬い椎茸の軸の部分が下に向いて水に浸かるようにしておくのがポイント。あとは椎茸全体が水に浸るよう、落とし蓋のようにラップをかぶせて冷蔵庫で一晩おきます。
このようにじっくりと戻すことで、干し椎茸のうま味がしっかりと戻し汁に溶け出し、椎茸自体もふっくらと食感良く仕上がります。
時間がないときは、干し椎茸を20〜30分ほどぬるま湯(分量外)に浸けておくと、早く戻すことができます。このとき、砂糖をひとつまみ加えておくと、砂糖の保水性によって干し椎茸の中心部まで水分が浸透し、乾燥による風味の劣化を防ぐことができます。
作り方② 鶏むね肉に下味を付ける
続いて、鶏むね肉を準備していきましょう。
実は今回、パサつきがちな鶏むね肉をしっとり柔らかく仕上げるためのひと工夫があります。それが、下味に砂糖と酒をもみ込むというやり方です。
まずは、鶏むね肉をひと口大のそぎ切りにします。包丁を寝かせるようにして繊維を斜めに断つように切っておくと、食感が柔らかくなり、味もしみ込みやすくなります。
ここで、下味に砂糖と酒をもみ込みます。
砂糖と酒には、水分を抱え込む保水作用があるため、加熱するとパサつきやすい鶏むね肉も、しっとり柔らかくジューシーに。また、砂糖には肉の臭いを保持して揮発させないようにする効果があるので、酒の消臭効果も相まって、鶏肉の余分な臭みも抑えることができます。ほど良く味も付くので、まさに一石三鳥!
砂糖と酒をもみ込んだら、あとは調理するまで置いておくだけ。
作り方③ 干し椎茸と白菜を切る
鶏むね肉をしっとりとさせている間に、その他の具材を切っておきましょう。
戻しておいた干し椎茸は、汁気をしぼって2〜3等分のそぎ切りに。軸は、石づきを切り落として食べやすい大きさに切ります。
白菜は、お好きな形で食べやすいサイズに切ります。
このとき、繊維に沿った縦方向に細長い形や、繊維を断つように横方向にそぎ切りにする形など、どちらの切り方でもかまいません。いずれの切り方でも、やや大ぶりに切った方が食べごたえと存在感が出るのでおすすめです。
作り方④ 炒めて煮る
さて、ここまで準備ができたら、あとは炒めて煮るだけです!
まずは、深さのあるフライパンか鍋にごま油を熱して白菜を炒めます。
ここでは、あまり触らずに、焼き色を付けるような気持ちでいればOK。強めの中火で、時折菜箸で焼き面を変えながら、白菜の茎の部分に少し透明感が出てくるくらいまで炒めます。
白菜は、このように最初にこんがりと焼きつけながら炒めておくことで、ぎゅっと凝縮された甘みやうま味を引き出すことができます。あとから煮込んだときも、煮崩れしにくく、しっかりとした食べごたえを感じることができますよ。
白菜が炒まってきたら、干し椎茸を入れます。さらに、干し椎茸の戻し汁に水を加えたもの(合わせて600ml)を注ぎ、合わせ調味料もここで一気に加えます。
あとは蓋をして、フツフツするくらいの火加減(中弱火程度)で白菜が柔らかくなるまで煮ていきましょう。
白菜が柔らかくなったら、最後に鶏むね肉と乾燥春雨を投入。
このとき、鶏むね肉には、煮汁に入れる直前に片栗粉を薄くまぶしておきます。ちょっとしたひと手間ですが、鶏むね肉がよりふっくら柔らかい食感になり、さらに煮汁に適度なとろみも付いてよりおいしくなります。
あとは弱火で、鶏肉にしっかり火が通るまで煮れば完成。
できました!
お好みで糸唐辛子を添えて、早速いただきます!
とろとろの餡が絡んだ鶏むね肉は、ふっくらとした口当たりで、柔らかくジューシーな仕上がり。砂糖と酒の下味の効果もあり、噛みしめるたびにじんわり鶏肉のうま味が広がります。
続いて、柔らかく味がしっかりしみ込んだ白菜。
煮込む前にごま油で焼いておいたため、くたくたになりすぎず、ほど良い存在感が残っています。ごま油の香ばしさをまとった白菜は、甘みとうま味が口の中でほどけて大満足の味わい!
具材のうま味をたっぷり吸った春雨も、つるつるで噛みごたえがあり良いアクセントに! 食感が楽しくてやみつきになりますね。
そして、一晩かけて丁寧に戻した干し椎茸。こちらも味が抜けることなく、ふっくらとした食感。噛むたびにジュワ〜っとうま味があふれ出し、このひと切れだけでご飯をたくさん食べてしまいそう……!
ある程度食べ進めたら、ここはやはりご飯(分量外)にのせて、丼仕立てに!
とろりとした、こっくり味わい深い餡が白米によく絡み、ご飯が進むこと間違いなし! 鶏肉はもちろん、白菜や干し椎茸なども濃厚な味付けでご飯との相性は抜群。ご飯だけでなく中華麺などと合わせても良さそうです。
まとめ
今回ご紹介したレシピは、オイスターソースと干し椎茸のうま味を活かし、そのまま食べても、ご飯にかけてもおいしい、濃厚な味わいの中華風うま煮になっています。
紹興酒だけでなく、八角や五香粉(ウーシャンフェン)などのスパイスをプラスすると、ごちそう感がグッと増し、より本格的な味わいに仕上がります。
たけのこや豆腐など、お好みの具材を使っていろいろなアレンジもできるので、ぜひ皆さんもお気に入りの味で楽しんでみてくださいね!
書いた人:庭乃桃
料理・食文化研究家、女子栄養大学 食生活指導士。「おいしい」を取り巻くさまざまな食卓の風景に目を向けながら、企業向けレシピの開発や、執筆、講演など多方面で活動中。著書『おいしく世界史』(柏書房、2017年)。
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